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種について

「F1」や「在来種」、はたまた「遺伝子組み換え」など、種に関する気になるワードを最近よく目にします。このページでは、私たちが生きていくうえで欠かすことのできない「種」のことを紐解いていきます。

種子は命の源泉

植物という命が芽生え結実し、それが食卓を彩り、わたしたちの身体を形づくります。家畜の餌も植物ですので、肉も種子の恩恵と言えるでしょう。現代社会においては、田畑からの恩恵でほとんどすべての食物が形成されているのです。

そもそも植物は、野菜やお米としてわたしたちの舌を喜ばせ、胃袋を満たすために存在しているわけではありません。ヒトを含めた動物のすべてがそうであるのと同様に、その生存の目的は「命をつなぐこと」に他ならないのです。

悲観的な見方をすれば、野菜や穀物は「生きるため」というヒトの都合で種を蒔かれ、収穫量を確保したり嗜好面の需要を満たすために発展した技術によって育種・栽培され、その挙句、命をつなぐことも叶わずにその生を終えます。

わたしたちにできることは、感謝とともに命をいただき、それを無駄にしないということ。そして、できるならば栽培者自らが、彼らに代わって命をつなぐ役割を担うことに他ならないのです。

種子のタイプ

野菜や穀物は原種に近ければ近いほど栽培が難しく、収量が多くありません。それを先人たちが品種改良を重ね、食味を向上させたり病気に強いものにするために交配を行ってました。

キャベツを例にとると、形が異なるもの(丸いものや楕円形のものなど)が存在し、甘みが強いものや苦いものなど味の違いもあります。また、まわりが病気にかかり弱っていく中でも生き生きとしている生命力の強いものがあったり、虫に喰われにくいものがあったりもします。そんな中からニーズを満たすものを選抜して掛け合わせ、より良い特徴を持った子孫を人為的に作るのが交配技術です。

また食味は、栽培する地域や土壌や気候によっても異なります。そのため、同品種を栽培しても地域によって(あるいは圃場によって)生育や食味が違っているのです。土着の種(在来種)の存在も、本来は環境的な要因で発生したものなのです。

その成り立ちや性質の違いから、大きく分けて2タイプの種子があります。

・F1(一代交配種) F1品種は、「メンデルの法則」で有名な「雑種強勢」の特性を生かし、優良な特性を持った親株同士を交雑させてつくられています。

F1品種について詳しくはこちら >>

・固定種(在来種・エアルーム種) 幾世代にもわたり種を採り続け、その度に選抜・淘汰し、遺伝的に形質が安定した品種のことです。自家採種した種から同様の形質を持つ植物を育てることが可能です。

固定種について詳しくはこちら >>

今話題の「遺伝子組み換え」

この2タイプ以外にも「遺伝子組み換え種子(GM種子)」があり、こちらは世間の注目を集めています。

GM種子は、バイオテクノロジーによって生み出された、生産性と病虫害および雑草の防除を兼ね揃えて品種改良された品種です。

中でも有名なのが、除草剤への耐性を備えた大豆が有名です。 遺伝子操作によってその薬剤に対する抵抗力を作物に持たせてあり、作物が育っている畑に農薬を全面散布すると、雑草を枯らして作物だけが生き残るという仕組みです。他にも、遺伝子操作によって「殺虫性」を発揮する(虫に対する毒性物質を持たせている)ものもあります。 近年では、消費ニーズを反映させた遺伝子組み換えが行われている傾向があるようです。

また、目的(耐除草剤や殺虫性)以外の遺伝子を発現させてしまう可能性があるため、想定外の有害物質を作り出す危険性があると言われています。

GM種子を生産する企業各社は自家採種を厳しく禁じていて、外国では訴訟問題が深刻なものになっているようです。各社は種の特許を取得していることが多く、訴訟になると企業側に有利になることが多いのです。

ちなみに現在、日本において遺伝子組み換え作物の栽培が禁止されているわけではありませんが、商業的な栽培は行われていないため、今のところ国産の野菜・穀物のほとんどは遺伝子組み換えではないと言えますが、輸入によって既に流通しています。特に大豆やコーンを原料とする食用油や醤油などはその割合が高く、表示義務のないものもあります。

種苗法の改正によって自家採種の禁止が危ぶまれる声が多く聞かれました。 一部誤解からの危惧も中にはあったにせよ、今後への警鐘として、政治情勢をしっかりと見極めていく必要があります。それ次第では、本当に自家採種が禁じられる日が来るかもしれません。


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