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高級卵のお取り寄せなら、『お多福たまご』

1個150円の卵は「高級卵」?

私が養鶏を始めたとき、師匠という存在はいませんでした。 本を頼りに、すべて独学で勉強を始めましたが、飼育方法や餌の作り方、害獣対策など様々な事に悩みました。 そんな悩みの中でも、最も悩んだのが「値決め」です。 私が決めた価格は、ほぼ相場に左右されないといわれる卵の約15倍。 1個150円。1パック10個入りで1,500円。 高級卵で打ち出すつもりは全くありませんでしたが、こだわりの餌のコストや、手間暇の事を考えると、どうしてもこれ以上価格を下げることは難しかったのです。 発売開始当初は、 「なんで卵がこんなに高いの?」 「他の卵と何が違うの?」 「こんな値段じゃ誰も買わないよ」と、 立ち止まってはお客様が過ぎ去っていく日々の連続でした。 当時の私は、とことんこだわる卵を作れば、きっと求めている人が購入してくれる、と思っていたので、自分の考えの甘さに愕然としました。

卵が「高級卵」と言われていた時代を知る人たちとの出会い。

私の祖父母は、戦後を生き抜き、貧しい時代も経験してきました。 小さい頃は、祖父母が当時、生活に苦労した話をたくさん聞きました。 その中でも、特に興味を持って聞いた話が、庭先で育てていた鶏たちの話です。

昔から南九州では、庭などで鶏を飼育する「庭先養鶏」の文化がありました。 各家庭で数匹鶏を飼っているのも珍しくなく、毎日卵を食べ放題なのかなと思っていましたが、当時は現代ほど品種改良も進んでいないためか、産卵率が低く、卵はとても貴重で、高級品だったそうです。

それは私の祖父母だけの話ではなく、地域に住むおじいちゃん、おばあちゃん達から、同じような話をたくさん聞きました。

「あたしはね、兄弟が8人いるんだけど、卵は貴重だから、卵1個を小麦粉と水で溶いて焼いて、8等分して食べたんだよ~」 「子供が産まれれば、産後の肥え立てにって卵をプレゼントされるとみんな喜んだ時代だったのよ~」 「卵は風邪をひいたときか、運動会の前にしか食べさせてもらえなかったのよ」 「具合が悪い時に、飲まされたわ」 とあちらこちらから、いろんな卵のエピソード話でお昼は盛り上がりました。

今では卵は、スーパー等で簡単に手に入る時代。いつでもリーズナブルなお値段で買うことが出来る時代を生きてきた私からすると、卵が「高級」だったというお話を聞くのは、なんだか不思議な気持ちがしました。

「昔の卵はこんな色だったな~」

私が養鶏を始めたころ、田舎の地域行事の際、お昼ご飯の一品おかずとして、私たちの卵を使用した、だし巻き卵をふるまう機会がありました。皆さんに「美味しい」と喜んで頂けるよう、頑張って腕を振るいました。 皆さんにこにことだし巻き卵をほおばって頂き、うれしかったです。 その時、てっきり「美味しい~」という声が聞こえるかと思いきや

「昔の卵はこんな色だったな~」

という声が、あちらこちらから聞こえました。

昔の卵の色? という事は、今私たちが食べている卵と、昔におじいちゃんやおばあちゃん達が食べていた卵の色は違うのでしょうか。 私はその時まで、鶏に与える餌や水などにこだわってきましたが、「卵の色」について考えたことはありませんでした。

私たちの卵黄の色は、レモンイエローです。 その為、「色が濃いほうが栄養があるよ」「色が薄いのは栄養が足りてないんじゃないの?」と言われたこともありました。 心配になり調べてみると、卵黄の色の違いで栄養価に差異は無いと、日本養鶏協会が公式ホームページに明記していました。 ですが、どうしても現在の「こだわり卵」や「美味しい卵」のイメージは、だいだい色や真っ赤の濃い黄身をしているように思います。

どうして黄身の色が違うのでしょうか? その時は気が付きませんでしたが、鶏に春夏秋冬のものを与えて育てていく中で、黄身の色が変わるのは「鶏に与える餌によって変わる」のだと気が付きました。 緑餌(野菜等)を多く与える季節には、いつものレモンイエローより、ふんわりオレンジ色になります。 また、私たちは与えておりませんが、唐辛子パウダーやパプリカパウダーによって、黄身の色が赤く変化する事もあるそうです。

また、高齢のお客様から「昔、子供のころに食べた卵の味がして、うれしくて、美味しくて、ご連絡しました」といった嬉しいお電話を頂いたこともありました。

昔のおじいちゃん、おばあちゃん達が育てていた鶏たちにはきっと、季節に育つ自然な野菜や、野草で育ったから、黄身の色がレモンイエローだったのかなと思うと、「昔の卵はこんな色だったな~」と言われて、少し私たちの卵が誇らしく思えるきっかけになりました。

巨人・大鵬・卵焼きってなんのこと??

地域のおじいちゃんおばあちゃん達との昼食時間の話も弾んだころ、 とある高齢男性の方が、 「巨人、大鵬、卵焼きって知ってるか?」 と尋ねてきました。 私はすかさず「わかりません、なんのことですか?」 と聞き返すと、 「俺らの生きてきた時代の象徴なんだよ」 とおっしゃいました。

お昼のランチタイムが落ち着き、 ”巨人、大鵬、卵焼き”のフレーズが忘れられず調べたところ、 昭和時代(戦後期)の日本の流行語だったそうで、 このフレーズの生みの親は、作家でのちに経済企画庁長官も務めた堺屋太一さんだといわれているそうです。堺屋さんが通商産業省(現在の経済産業省)の官僚だった1961年(昭和36年)度の経済報告の記者会見の席で「子供たちはみんな、巨人、大鵬、卵焼きが好き」と話して、それが広まることになりました。もとは若手官僚の間で、強い巨人軍や大鵬、物価の優等生と呼ばれた鶏卵が「時代の象徴」だと冗談で話していたことがきっかけであったそうです。

祖母に教わる、昔ながらの餌作り

私には、養鶏の師匠という存在がなく、本を頼りに餌作りを始めたわけですが、それでも知識や経験がない中での餌作りは手探りの状態が続いておりました。 そんな窮地を救ってくれたのが祖母の記憶でした。

「昔は季節の食材や、魚のあらを薪窯で炊いて、米糠と混ぜていたのよ」

当時は、いわゆるぬかみそ漬けのようなものを与えていたそうです。 私はその祖母の知識と、本で学んだ好気性発酵飼料の作り方を掛け合わせた餌作りを確立しました。

具体的にはオーガニックのサツマイモ、オーガニック唐辛子、オーガニック桑の葉、オーガニック大豆、天然魚のアラ、鳴門のワカメ、薬草を薪窯でぐつぐつするまで煮て、オーガニック米ぬか、オーガニック麦などと合わせるようにしました。 絶妙な水分量の加減や季節による気温変化の影響で、発酵が上手くいかないこともありましたが、経験を重ねるうちに、発酵飼料作りをマスターできるようになりました。

発酵の力

薪窯で煮た食材と米ぬかなどと混ぜて水分量を調節したら 50℃をキープしたあつあつの発酵ご飯の完成です。 酵素が活きている発酵ご飯は鶏の代謝を向上させるためか、とにかくガツガツ、美味しそうに食べる姿は、労を惜しますに仕込み時間が長い分、料理人冥利に尽きる瞬間でもあります。

『食』は『人』を『良』くすると書きますが、 これは、家畜である動物にも言えることだと思います。

経済合理性重視の餌ではなく、あくまでも、普段私たちが食べている、いえ、私(農場長)よりも高価で安心安全なものを食べている鶏さんは、とても贅沢な食生活なのかもしれませんね。

餌作りの見えない舞台裏~餌の原料へのこだわり~

餌の「原料」へのこだわりは、常に追求し続ける事が、鶏の健康に繋がってると体感しています。そのため、必要であれば遠方まで原料の買い付けに行くこともしばしば。

年に数回は、ダンプカーをレンタルして、往復で6時間かけて麦を買い付けに行きます。鶏さんのメインの餌となる、動物性たい肥を使用せず、微生物や土壌の力のみで栽培された自然栽培の麦(有機認証取得)です。 長時間の運転の後は、農場長一人で1袋30kgの麦を倉庫にしまっていくのですが、人力ではさすがに限界が…。 腰痛がひどくなる一方なのですが、鶏さんの美味しいご飯を食べる姿を見ると、体が続く限り頑張っていきたいと思う気持ちが強くなっていきます。

餌作りの見えない舞台裏~餌の原料へのこだわり~その2

さらにもう一つのこだわり食材がオーガニックのサツマイモです。 鶏にサツマイモ??と思うかもしれませんが、鶏さんにとっては奪い合いになるほど大好物なのです。 そのまま固いままでも食べるのですが、一度薪窯で煮たサツマイモを2~3日ほど熟成発酵させてから与えます。手間暇はかかるのですが、これまた美味しそうに食べる姿を見るとやめられないものですね。「自分がもし鶏だったら」を常に念頭に置いて、鶏さんの様子を観察して、食材選びや、配合内容など栄養バランスも含めて見極めながら与えるように心がけています。

放し飼い卵の魅力は、鶏たちのストレスフリーな暮らし

日本が高度経済成長期に入る前の、昭和初期に食べられていた卵の色や味についてお話ししましたが、その頃の飼い方は、日中庭で放し飼いをし、夕方には獣対策の為、土間や床下で飼育をするというような感じだったそうです。 私たちも健康のためにウォーキングやジョギング、スポーツをするように、鶏さんも足で穴を掘って餌を探したり、くちばしで1日1万回つつくこともあるそうです。 そんな運動で疲れたな~というときには羽を休めて日光浴をしたり、砂風呂に入浴したりと自由気ままに生活をしている姿は幸せそのものです。 特に日中のの砂風呂入浴タイムは羽毛についたダニや小さな虫を落としたりする意味合いもあるそうです。私たちも体がかゆいときに搔きたくなるように、鶏さん自身もストレスを感じないために、日ごろの行動には意味があるんですよね。そんな幸せそうに育った鶏の卵はとてもエネルギーに満ち溢れています。

走る鶏?!

そして、私たちの卵の特徴でもあり、こだわりでもある「走る鶏たち」。 とにかく走るスピードが速く、足音を立てずに前傾姿勢で走る様子はまさに忍者のような走りです。朝一番に、鶏舎のドアを開放し、放牧場に走り出す姿はとにかく元気いっぱいです!そしてそれを毎日継続するストイックさで、何をやっても三日と続かない農場長は脱帽です。雨の日も、風の日も、とにかく彼女たちは毎日走り続けるのです。

高級卵のお取り寄せなら、『お多福たまご』

そんな元気な鶏たちが育む卵は、自家消費や定期購入はもちろん、贈答用やお歳暮、内祝いなど、大切な方への贈り物としても選ばれています。 卵かけご飯はもちろん、だし巻き卵や、目玉焼き、オムライス等様々なお料理でお楽しみくださいませ。

自然放牧場 お多福たまご鹿児島県(鶏卵販売)

鶏本来のありのままの暮らしを実現するため、朝一番に鶏舎を開放しています。朝一番のチキンレースは圧巻です!餌の原料の 穀物・野菜全て、有機JAS認証を取得したもの、 栽培期間中農薬・化学肥料不使用のものにこだわりました。 魚粉や養殖魚は使用せず、天然魚のみを仕入れ、穀物・野菜と発酵させて、与えています。防腐剤・抗菌剤・添加物などを含む可能性があるものは一切与えず、太陽の下で、のびのびと暮らした放牧鶏の卵を生産しています。

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