2026/09/27
土を讃える焙煎所は、大地の実りの大元である土を讃えながら、土と人との物語を途切れさせずにつなぐ場所です。
一杯の珈琲やお茶が、大地と人がまだこの世界で付き合っていけるようなきっかけとなるように。
その思いから、珈琲豆をはじめ、小豆、黒米、ほうじ茶などの原材料には、栽培期間中に農薬や化学肥料を使用せず育てられたものを選んでいます。その上で、仕入れ先を通じて生産者や農園の背景をたどれることも大切にし、珈琲豆の一部には、生産者の暮らしや持続可能な生産に配慮して取引されたものを取り入れています。
焙煎を始めた当初から、できるのならば、いつか、土から生まれた器で火入れをしてみたいと思っていました。そして出会ったのが、暁陶房の笹谷さんが創り出す、まんまるな陶器焙煎器「珈悦(こうえつ)」シリーズです。清水焼という人の伝統を背負いながら、決して枠にとらわれない焙煎器。
陶器焙煎器は、言うなれば五感の焙煎です。豆たちの楽しそうな歌を聞き、珈悦の色彩が変化するのを楽しみ、蒸気から立ち上る香りに酔いしれる。火に委ねながら五感を研ぎ澄ますうち、煎り上がり。機械のように一度に大量生産はできませんが、ご依頼を受けてから少量ずつ、豆と火の状態に向き合って手仕事で仕上げています。
そんな焙煎を通じて出来上がった珈琲は、焙煎直後から数日をかけて飲み口が甘やかになってゆくのです。飲んだ後に残る香りはとても豊かで、滋味を感じる珈琲に仕上がります。
穏やかな火を受けた豆たちは、焙煎器の中でいつもカラカラポンと歌います。
それは、人が本来持つ調和の「火」の形だと思うのです。
出来上がった珈琲豆は、人に「楽しみ」「安らぎ」「喜び」をもたらしてくれるものでありながら、その大元である「土」に対して感謝と賛歌を捧げ続けるものでありたい。
雨の日の大地も晴れの日の大地も、目の前にその姿が見えなくとも、一粒の珈琲豆の後ろには紡がれた物語の全ての瞬間が存在しています。
そこへ私たちは「火入れ」の物語を重ね、その先の物語へとバトンを繋ぎたいと考えています。


陶器焙煎器で珈琲を焙煎するにあたっては、
①生豆を水洗い、乾燥させて運輸中の汚れを取り除くこと
②カビや割れのある豆を焙煎前後で丁寧に取り除くこと
上記を丁寧に行い、より飲み疲れしにくい珈琲に仕上げています。


自分にとって、「しごと」とは何だろうと考えます。
「仕事」。「仕える事」と書きます。
私は焙煎所を始める以前、公務員として国の政策等を調査・改善する仕事をしていました。法や制度の枠組みに仕えながら、その枠組みの現場の実情を調べ、より良い方向へ一歩ずつ改善するよう促す業務でした。
やがてコロナ禍が訪れると、街の静寂に相反して漏れ聞こえるのは混乱した生活の最中にある生々しさ、荒々しさや虚しさ、あるいは直線的な怒りの声。そのどれもが、私が仕える枠組みの外側にありました。
翻ってまた、私自身も確実にその大きな混乱の渦の中に生きる生活者の一部であるというのに。
この時まざまざと思い知らされたのです。
世の中の価値観が大きく覆るような大波が押し寄せたら、その衝撃は人の営みを法や制度の内側ではなく外側から揺さぶると。「すぐに」も「なんとか」も届かない場所で、強いうねりを生み出すのだと。
私は、公務員を辞めて私という人間の日常のど真ん中で生きることを決めました。
「すぐに」「なんとか」、日常の中で泥臭く動ける人でありたいと思ったからです。
「仕」という漢字の成り立ちを見ると、【人と、その横にまっすぐ立っている人「士」でできている漢字です。きちんと立って、人の手助けをする人が「仕」なのです。】とありました。
さらに、昔は「しごと」を「為す事(なすこと)」と書いていたことも知りました。
為事は、一人一人が己の意志で為すことで形にするもの。
仕事は、己の為事をもって他者と互いの凸凹を持ち寄りながら形にするもの。
私にとって日々の暮らしや営みとは、連綿たる大地と人の仕事の結実だと思える実感です。
為したい事は、日常のど真ん中にありました。
大地と人が、まだこの世界で付き合っていけるようなきっかけとなる一杯を届けること。
私という人間は数多のひと、もの、ことが結節することで成り立っていますが、その中でも「水」と「土」とは切っても切れない不可分な関係です。ひとりでも誰かと居ても、傍らの「一杯」がその身体を潤し続けていなければ生きていけません。
人は、「水」に「土」から得た植物を介して様々なものを溶け込ませます。
そこには甘味、苦み、酸味・・そして時間や感情さえも、多分に溶け込んでいるのだろうと思います。
珈琲を淹れれば異国の大地と人との、小豆茶を淹れれば日本の大地と人との。
大地に立って生きる人の日常の物語が1杯の中に確かに存在し、どこかの大地で、見たことのない誰かに紡がれた日々が結節し、今日の私の日常になる。
その誰もが持つ日常を表現したくて、焙煎を始めることにしました。
私たちの焙煎所の「為事」が「仕事」とつながるように。
長い時間をかけて人の手で作られた器を使い、大地に育まれた豆の音や香りを感じながら火を入れる時間を含めて、作り手の思いが込められた道具や、機械化されすぎない営みを未来へ残していくことも、陶器焙煎を続ける理由の一つです。
「土を讃える焙煎所」という屋号には、大地の実りに感謝し、大地と人との物語へ私たちの火入れを重ね、その先にある物語へバトンを手渡したいという願いを込めています。

私たちは、大地に向き合うことは、人に向き合うことでもあると考えています。
食料から電子部品に至るまで、人が生きるためには多くの大地の資源を使いますが、現代社会においてはその大部分は消費されるのみで直接土に還ることはありません。
私一人が生きるために使用する大地からの資源量と、大地への還元量はどう足掻いても釣り合わないでしょう。
大地と向き合うと、自然との断絶や環境破壊を繰り返す人間の姿が映し出されます。
だからといって、私たちはこの大地の上で利便性を持つ社会の恩恵にあやかり生きることを、断罪することは出来ません。
それもまた紛れもない人と大地の関わり方の歴史であり、先人から続く日常がもたらしてくれた恵みとして、自身の「生」をつないでいるからです。
一方で、それを「もうどうしようもない」「こんなもんだ」「とくに不自由はない」と正当化し、無関心かのように生き振る舞うのも不自然なことだと思うのです。
私たち事業者は、消費を促す側の存在です。
だからこそ、「人だけが消費する社会を超えて、どう大地に還すことができるのか」を仕事として考え行動します。
大地と人が、まだこの世界で付き合っていけるように。
そのために、私たちの身体とお金の流れを使うことから始めています。
<身体を使った土への取り組み ~大地の再生活動への参加~>
▶森を支える自然地形を壊し人工的に地形を変えることにより、水脈と土中の空気の流れが分断されて水を湛えることが出来なくなっている山や森が日本各地にあります。
神社仏閣の神域と呼ばれる奥山にあっても、同様のことが起こっています。
奥山の森林・自然は下流の都市と繋がり、下流の自然は上流の自然にも大きな影響を与えていることが分かっています。
このような中で、依頼のあった地域に赴いて分断された水脈・地脈をつなぎ直し、流域全体を捉えてその土地の風土再生を促す施工を行う方々が居ます。
土を讃える焙煎所は、主に近畿圏を中心としてその活動に参加しています。
大地の再生活動は、能登や熊本の被災地支援にも広がっています。
【過去活動WSに参加させていただいた団体】
・大地の再生 https://daichisaisei.net/
・庭屋いぶき https://niwayaibuki.jp/
・増茂庭園設計舎 https://www.masumoteien.com/
<お金の流れを使う取り組み>
▶事業者は消費を促す存在です。私たちの商品がお客様の日常とつながり、私たちの手元にはお金が巡ります。商品を購入した後のお金がどう事業者に使われたか知ることはあまりないと思います。一杯の珈琲やお茶のその後は、私たちの日常にもつながっています。私たちはその日常を大地へ還る物語と続くよう、売り上げの一部を利用して大地の再生活動や、活動時の差し入れに使っています。
現時点では大地の再生活動が柱ですが、今後も学び、泥臭く動く中で「人と大地」がつながる線を増やしていき、作り手や買い手の思いを一度きりの消費で終わらせることなく、資源やお金が次の大地と人の営みへめぐる形をつくることが目標です。
現在は珈琲に加えて、日本の大地で育った小豆を焙煎した小豆茶や、小豆に黒米・ほうじ茶を合わせたブレンド茶づくりも進めています。私たちは、これからもさまざまな土地の実りと向き合い、陶器の火入れだからこそ表現できる香りや味わいを探していきます。
そして、一杯の飲み物を囲む時間から人と人がつながり、その選択が生産者や手仕事、大地を支える循環へつながっていくことが私たちの願いです。
最終的には、人が生きることそのものによって大地が少しずつ豊かになる世界を目指し、土と人の物語を次へつなぐ仕事を続けていきます。



土を讃える焙煎所にお立ち寄りいただきありがとうございます。
当店では、清水焼で創られた陶器焙煎器で焙煎した珈琲や小豆茶などを販売しております。
焙煎中の豆たちと戯れる時が一番楽しい、そんな焙煎所です。
<焙煎方法について>
当店では陶器でできたまんまるな焙煎器を使用して豆をじっくりと直火で焙煎しています。大きな機械とは異なり、一度に大量に煎り上げることはできません。
その日その瞬間にしか訪れない感覚を大切に、ひとつひとつ手仕事でお届けしております。
<焙煎する豆たちについて>
大地の実りを思うとき、1粒の豆の中には気の遠くなるような時間紡がれてきた「地と人の物語」が確かにあります。
焙煎所は、その物語を受け取り最後に火入れをさせてもらう場所です。
地と人の物語が豊かに続くために必要な選択をする。
その考えから、焙煎に使用する素材は土に負荷が少ない「栽培期間中農薬、化学肥料不使用」のもの、「農家の方の顔が見える」ものを使用することにしています。
<人を超えて、大地へ繋ぐ活動>
私たちは事業者として人が消費して終わるのではなく、日本の大地へ直接還元できる流れを「お金」の面からも生み出すことを目的として、売上の一部を活用し大地の再生活動等に参加しています。





