石窯の火と、黒糖の香り。
12月になると、決まって日南市風田地区へ向かいます。1年に一度、この時季だけのさとねりづくりのお手伝いです。 さとねりというのは、この地域の言葉で黒糖のこと。風田では江戸時代からずっと、同じ製法でさとうきびから黒糖を作り続けています。機械化が進んだ現代でも、ここでは変わらず石窯と薪と、人の手だけで仕上げます。

朝から石積みの窯に薪をくべ、火を起こします。
窯口から見える炎の色は、オレンジ色というより白に近いくらい、力強く燃え上がります。顔に当たる熱気と、背中に感じる冬の冷たい空気。その対比がなんとも心地よくて、毎年この瞬間が好きです。 搾りたてのさとうきびの汁を大きな土鍋に入れ、薪の炎でゆっくりと煮詰めていきます。最初はさらさらとした薄い液体が、時間をかけるにつれてだんだんと色が深まり、とろりとした琥珀色に変わっていきます。 かき混ぜる木べらが重くなってきたら、もうすぐです。

火加減の見極め、かき混ぜるタイミング、型に流し込む瞬間。どの工程も、長年の経験と勘がものをいいます。教わろうとしても言葉にならない部分が多くて、毎年隣でじっと見ながら、体で覚えていくしかありません。 型に流し込まれたさとねりが、ずらりと並ぶ様子は壮観です。つやつやと光る琥珀色の板が、冷えるにつれて少しずつ表情を変えていきます。固まったものを割ると、ざらりとした断面と、深い甘い香り。スーパーで売っている黒糖とは、まるで別ものです。

添加物はいっさいなし。さとうきびと、薪と、火と、人の手だけでできあがります。 チョコレートをつくるときも、素材そのものの力を信じることを大切にしています。風田のさとねりづくりを間近で見るたびに、自分の仕事の原点を思い出す気がして、毎年この場所に来ることが、私にとってとても大切な時間になっています。 今年の12月も、また来ます。
