


暑さ寒さも彼岸まで。
毎年「今年は暑い」というセリフが挨拶がわりになってきてしまった昨今。
新しい夏が来るたびに新鮮に「暑さ」を感じてしまうようになってしまいました。
もう少し若かった頃は、「今年はめちゃくちゃ暑い!やっぱり異常気象や」
なんて交わされているご年配の方々の会話に
(去年もこれくらい暑かったさ。え!?なんで忘れてるん?)
心で呟いておりました。
歳をとるというのは、時に物事に新鮮さを取り戻させてくれるんだ!
そんな風に思えるようになってきました。
今年はありがたい雨が多く、ブルーベリー達は暑さにバテそうになりながらも
持ちこたえてくれました。

防鳥ネットが経年劣化を始めていた為に起こった大捕物劇。
毎回妹から「また、鳥が入ってる!」「実が全部食べられてる!」
と、おっそろしい文面が朝送られてきます。
私は車をぶっ飛ばして、圃場へ向かいます。
圃場では、鳥に開けられたネットの穴を妹がひと穴ずつ閉じる作業をしています。
もうその作業の跡は数えきれません・・・。
「妹よ。すまん!
姉ちゃんが必ず一匹残らず焼き鳥にしてやるからな!!」
圃場のネットの中を縦横無尽に飛び回り一年手塩にかけて育てた実をビュッフェ形式で食べる憎っくき鳥。
私は、殺気と闘志を全身にまとい感覚を研ぎ澄まします。
「おった!」

何してるん!?
果樹園の父の手伝いを始めた頃は、今よりもっと只々単純に作業として仕事をしていました。
だから、「考えない」し、「気がつかない」。
そんなところから始めましたが、今では随分俯瞰して見られるようになってきました。
父とのやり取りは結構な確率で「平行線」をたどることが多い娘の私。
父と子のよくある話です。
なんて分からず屋の爺さんなんだ!
この頑固ジジイ!
と心の中で、ブツブツ。
私の言うことに全く耳を貸そうとしない父 vs 何を言っても反抗する娘
の図です。(笑)
妹や母は私と父のいつものやり取りを上手くフォローして両者なんとなく
腹の虫を収めることができます。
月日を重ねると、私が今直面している問題に、解決策としてたどり着いたのが
父が今やってること言ってること。
だと、身をもって理解できることが増えてきてしまいました。

守護神と夫が呼んでいるのがコレ。

カラスは頭がいいのか?
私たちの生活を良く観察しているのは、植物も同じだと思います。
カラスに限らず、動物も植物も本当によく我々人間のことを観察しています。
見ているようでほとんど断片的にしか周りを見渡せていないのが私です。
今年は、鳥に随分頭を抱えています。
ブルーベリーがいよいよ収穫開始しようとした矢先のことです。
圃場に行くと、昨日と何か景色が違います。
そうです。
ブルーベリーの実がないのです!
「・・・・・・・。」
言葉もありません。
地面に散らばるブルーベリーちゃん。

ブルーベリーの収穫が始まりますと、うちの犬は喜びます。
ブルーベリーがお母さんからおすそ分けしてもらえるからです。
収穫を終えて帰ってくると、いつも以上に私の周りをついて回ります。
「ちょうだい。あの実」
そんな目で。
一粒あげると猛ダッシュで何処かへ。
自分の場所だと思っているクッションの上で大事そうにちょっとずつ食べています。
しばらくすると、また私のところへ来て
「ちょうだい。あの実」
満足するまで、このラリーを何回か繰り返します。
葉っぱで遊び疲れて寝ているので、娘がその葉っぱを犬に挿してみました。

この季節の雨は植物にとってとんでもないきっかけをもたらします。
果樹園には色々な植物が生きています。
毎日見ているとこのエリアはこの植物このエリアはこの植物。
縄張りのようなものがあります。
中でもギシギシという薬草があるのですが、これが凄いのです。
この時期の雨が降るたびに、「え・・・・。」
ゾワっとするぐらいの成長です。
もう、他を寄せ付けぬ勢いで成長するので、通りかかると私も
引き抜こうとします。
想定内ですが、根は引き抜けず茎の途中でちぎれてしまいます。
少々「しくじった」と心の中で思いますが、草引きが目的でな私はそのまんま。
これがマズイのです。
ギシギシの株はどんどん太く大きくなって生きます。
仕事が几帳面な夫はある日、ユンボを出して来て
私が、コツコツ茎をちぎって太らせてがっちり地球をつかんで離さないギシギシを
根こそぎ掘り起こしていました。(笑)
しかし、その根っこを見てびっくりです。
大人参の親玉みたいに白くて太い根っこです。

木の周りの土は、柔らかく有機物でしっかりと良い土になってきているのでミミズがたくさんいます。
元は田んぼなので、硬くて呼吸もできないほど細かな土の粒子で詰まっていますが、植え付け時に大量の落ち葉で作った
有機物を混ぜ込んでいるので、少しづつ土壌は健康になっていきます。
その証でミミズがたくさん見つけることができます。
このミミズをご馳走だとやってくるのが「モグラです」
元気に育っていた木が、急にしょんぼりし始めます。
こちらもそんな木を見つけては慌てて木の周りの土を・・・。
ない!・・・・。

小学生の頃通学は片道3キロ余りの道を歩いて登校しておりました。
なにせ田舎の道ですので、時折様々な物語に出会います。
中でも、小動物が夜のうちに車に轢かれている現場を通るときは
朝から、どーーーんと気持ちが暗くなってしまったものです。
そんなに大きな動物ではありません。
モグラです。
「じっとしているだけなのかな?」
そう思って近寄りますが、息絶えています。
「あ・・・。」
小学生ながらも言葉になりません。
ぽってりしたフォルムに、チョコッと短かい特徴的な前足。
顔も、愛くるしくて親指姫に出てくるモグラとは全然イメージが違います。
生きている姿で目にしたことはありませんが、そんな姿では時折目にしていたので
可愛い生き物だという印象の強い動物のひとつです。

毎年交わされる夫との会話に
「5月ってこんな寒かったっけ?」
「5月ってこんな暑かったっけ?」
「5月ってこんなに雨降ったっけ?」
ようやく気がついたことがあります。
5月は寒かったり暑かったり雨がよく降ったりピタリと降らなくなったり。
そんな季節だということ。
そして、我々夫婦の季節の記憶が随分曖昧だということ。
毎年「この季節を忘れまい!」と誓い会話をするも
冒頭の調子で、「今」の空模様に記憶がすっかり飛んでしまうというなんともお粗末な始末。
