生産者のお便りとお知らせ

寒かった時のお話。

2026/05/11

【1月のある日 冷たい空気と、あたたかいお弁当】

「さむ…」

思わず、息と一緒に言葉がこぼれた。

手袋をしていても、指先がじんとする。

畑の土も、どこか固くて。

踏むたびに、冬の音がする。

 

作業をしていると、体は少しずつあたたまってくるけれど。

最初の一歩が、どうしても重たい。

 

「今日はなかなかやな」

妹も肩をすくめながら言う。

 

「ほんまやね。でも、この寒さはちょっと安心するわ」

 

そう返すと、妹が少し不思議そうな顔をした。

 

冬は寒くて、正直しんどい。

でも、このきちんとした寒さがあるからこそ。

木も、ちゃんと休める。

虫も落ち着いて、春の準備が整う。

 

もし、この寒さがなくなってしまったら。

 

ふと、そんなことを考える。

 

四季が少しずつ曖昧になっていって。

冬なのにあたたかくて、春が急に来てしまうような世界。

 

「それ、ちょっと怖いな」

 

「やろ?」

 

想像するだけで、胸の奥がざわっとする。

当たり前に巡っているものが、当たり前じゃなくなること。

それが、こんなにも不安になるとは思わなかった。

 

だからこそ、この冷たい空気も。

少しだけ、大事に思えるのだ。

 

「お昼にしよか」

 

父の声で、作業を止める。

 

今日は少し特別なお弁当だ。

 

包みを開けると、チキンカツ。

しっかり衣がついていて、見るだけで嬉しくなる。

 

「え、今日すごない?」

妹が目を輝かせる。

 

「豪華やなあ」

 

冷たい空気の中で食べるチキンカツは、いつもよりずっとおいしい。

かじると、じんわりと味が広がる。

 

そして、お味噌汁。

 

湯気が、ふわっと立ち上る。

 

「これが一番やな」

 

一口飲むと、体の奥までじんわりあたたかくなる。

 

「はぁ…あったまるなあ」

妹がほっとしたように言う。

 

「ほんまに」

 

さっきまでの寒さが、少しだけやわらぐ。

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5月の畑。

新緑がやわらかく光っていて。

風もあたたかくて、作業していても心地いい季節。

 

同じ場所なのに、まるで違う顔をしている。

 

今はまだ、枝だけの景色だけれど。

この寒さを越えた先に、あの緑がある。

 

そう思うと、この冬の一日も、ちゃんとつながっているのだと感じる。

 

寒いのは、やっぱり大変だ。

でも、この寒さがあるからこそ。

春も、初夏も、あんなに気持ちいいのだろう。

 

畑には、作物だけじゃなく、こんな時間も育っている。

Deai orchard奈良県(果樹園)

無農薬で20年以上ブルーベリーを作り続けているDeai orchardです。そのまま食べて安心な自家栽培ブルーベリー、たっぷり贅沢に使い作ったジャムをお届けします。減農薬、無農薬のぶどう作りや無農薬の銀杏など、他にも様々な果樹を育てています。


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