
「これは…なかなかやな」
畑に入って、思わず声が出た。
冬を越えた草が、そのまま枯れて。
あちこちで絡まるように立っている。
風が吹くたびに、かさかさと音を立てる。
まるで「そろそろやで」と急かされているみたいだ。
「手入れ、せなあかんな」
そう言いながらも、少しだけ気合いがいる景色だ。
きれいに整っていた時期を知っているからこそ、このボサボサ具合はなかなか堪える。
腰に手を当てると、いつもの重み。
道具入れが、しっかりとぶら下がっている。
剪定ばさみ、手袋、紐、小さなナイフ。
あれもこれもと入れているうちに、いつの間にかパンパンになってしまった。
「ちょっと詰めすぎちゃう?」
妹が横から覗き込む。
「いや、これ全部いるねん」
そう答えながらも、自分でも少し笑ってしまう。
歩き出した瞬間。
「…あ」
小さな音と一緒に、何かが落ちた。
「あーもう、またや」
しゃがんで探す。
でも、枯れた草の中に紛れると、小さいものはすぐに見えなくなる。
「どれ落としたん」
「クリップみたいなやつ」
「それ、見つけるん大変やで」
妹も一緒に探してくれる。
少しの間、無言で手を動かす。
草をかき分けて、土を少し払って。
「あった」
ようやく見つけて、ほっとする。
「よかったなあ」
「ほんまに」
小さいもの一つでも、畑の中では簡単に隠れてしまう。
広いようでいて、こういうときだけやけに手強い。
道具入れを軽く叩く。
「すまんな、ちょっと酷使しすぎやな」
心の中でそう言うと、なんとなく少しだけ軽くなった気がする。
でもきっと、またいろいろ詰め込んでしまうのだろう。
それだけ頼りにしている証拠でもある。
「よし、やろか」
気を取り直して、草に向き直る。
最初のひと束を引き抜くと、土の匂いがふわっと立つ。
少しずつ、景色が変わっていくはずだ。
大変だけど、嫌いじゃない。
こうして手を入れていく時間が、畑をまた整えてくれる。
畑には、作物だけじゃなく、こんな時間も育っている。

