無農薬・無肥料が基本
自然そのものが相手であるため、その多くは栽培技術が確立されている訳でも、完結したメソッドが存在する訳でもありません。基本的には農薬や肥料を使わず、できるだけ燃料を必要とする機械を使わずに
「自然にまかせて」
「自然の力で」
「自然を模した環境で」
栽培する漠然とした枠組みです。
栽培する上での「自然」の定義づけがそれぞれの農法あるいは農家で異なります。また、農家によって、地域や圃場によってその方法はさまざまです。農法で判断するのではなく、ある程度農業や野菜に関する知識を持ち、農家とのコミュニケーションや信頼関係を築くことが重要です。
自然農法
「わら一本の革命」で有名な福岡正信氏や宗教家の岡田茂吉氏などが提唱しています。
福岡正信氏は、哲学的な書籍は多く残されていますが、栽培技術がしっかりと伝わっているわけではありません。不耕起(耕さない)、無肥料、無農薬、無除草を基本とし、いろいろな種を泥団子の中に入れて蒔く「粘土団子」が有名です。哲学的で難解ではありますが、世界中で支持を得ています。
岡田茂吉氏は「世界救世教」教祖としての宗教家の一面が有名ですが、「MOA自然農法」を提唱した人物です。基本的に耕すことをせず、野菜残渣などから成る植物性堆肥の活用は奨めています。「MOA自然農法」では、栽培方法だけでなく流通や環境への配慮までがある程度規定されています。
自然農
川口由一氏が実践し、彼の弟子によって広がりを見せている栽培方法です。 「耕さず、肥料・農薬を用いず、草や虫を敵としない」が原則で、人が余計なことをせずに自然にまかせつつ、持続可能な農のあり方を追求するものです。無農薬はもちろん、不耕起と無施肥が基本ですが、原則に囚われすぎず、できるだけ足し算をせず、状況に応じて補い(刈り草の上から米ぬかを少量撒くなど)をすることを許容しています。
野菜の生育を阻害している草を地際(成長点あたり)で刈り、あたかもそこで生を全うしたようにその場に横たえます。そうして草や残渣が発酵・分解されながら堆積していく層「亡骸の層」がグラウンドカバーとなって土壌が日光や風雨に直接晒されることで起きる乾燥や浸食を防ぎ、微生物や小動物の生態系の場となります。畑の中に、森の土壌と同じように自ら循環する環境を作り上げる栽培方法とも言えます。
自然栽培
無農薬・無肥料を基本に栽培することを指します。 「自然栽培全国普及会」という団体が、加盟農家向けに自然栽培とはいかなるものであるかを詳しく規定しています。「MOA自然農法」と同じく、団体が考える「自然栽培」の規定を明文化しています。土壌に残留する肥料や農薬を不純物「肥毒」と称し、それを除去することを奨めています。
また、「慣行栽培」「有機栽培」にカテゴライズされない、農薬と肥料に頼らずに栽培を実践している農家も「自然栽培を実践」と自ら称していることがあります。「有機栽培」と違って法律で言葉の使用が制限されているわけではなく、「自然栽培」という言葉自体に既成の定義がないため、無農薬・無肥料(もしくは化学肥料不使用)にこだわる栽培者が、自らの栽培法を表現する言葉にもなっています。