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生産者のお便りとお知らせ

ふくらまなかった蒸しパンと、畑のご褒美

2026/04/06

「これ、どう見ても失敗やんな」

妹が小さく笑いながら、私の手元をのぞきこんだ。

手のひらに乗せた蒸しパンは、見事なくらいぺたんこで。

本来ならふわっと丸くなるはずのところが、ずっしりと重たいまま固まっている。

朝、少しだけ急いでいたせいだろう。

火加減も、水の量も、どこかで雑になっていた気がする。

 

「まあ、食べられへんことはないやろ」

そう言ってみたものの、内心は少し悔しい。

せっかく休憩用にと思って作ったのに、と思う。

 

畑の端に置いた、ひっくり返したカゴ。

それをテーブル代わりにして、水筒をそっと置く。

いつもの簡単な休憩場所だ。

土にそのまま腰を下ろすと、じんわりと冷たさが伝わってくる。

でも、それがどこか心地いい。

 

風が少し吹いて、葉っぱがやわらかく触れ合う。

遠くで鳥の声がする。

こういう時間は、何も足さなくても、ちゃんと満ちているものですね。

 

「食べてみよか」

蒸しパンを半分に割る。

中もやっぱり、少し詰まっている。

ふわふわとは言いがたい仕上がりだ。

 

一口、かじる。

 

「…あれ」

思わず声がこぼれた。

 

「どうしたん」

妹が不思議そうに見る。

 

「これ…思ってたより、おいしい」

 

「え、ほんまに?」

そう言って、妹も一口。

そして、同じように少し目を丸くした。

 

「ほんまや。なんか、ええ感じやん」

 

さっきまでの失敗の気持ちが、ふっと軽くなる。

家で食べていたら、きっと「失敗やん」で終わっていたと思う。

でも今は違う。

この空気も、風も、少し疲れた体も、全部が重なって。

ただの蒸しパンを、ちゃんとした“ご褒美”にしてくれている。

  

「また作ろかな」

妹が静かに言う。

 

「今度は、ちゃんと膨らましてや笑」

 

そう答えながら、もう一口かじる。

やっぱり少し詰まっている。

でも、その素朴さが、どこか落ち着く味でもある。

 

失敗したはずなのに、こうして笑いながら食べている。

それだけで、今日はいい日だと思える。

 

畑のおやつは、不思議だ。

どんなものでも、ちゃんとおいしくなる。

きっと、ここで過ごす時間ごと味わっているからだろう。

 

畑には、作物だけじゃなく、こんな時間も育っている。

Deai orchard奈良県(果樹園)

無農薬で20年以上ブルーベリーを作り続けているDeai orchardです。そのまま食べて安心な自家栽培ブルーベリー、たっぷり贅沢に使い作ったジャムをお届けします。減農薬、無農薬のぶどう作りや無農薬の銀杏など、他にも様々な果樹を育てています。

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