放棄地のポンカン
友人からいただいたのは、たわわに実った無農薬のポンカンでした。 宮崎の温かな陽射しを浴びて育ったその実は、スーパーに並ぶ整った顔立ちのものよりずっと力強く、手に取ると大地の香りがするようでした。無農薬で育てられた皮は、いわば宝物です。 普段なら捨ててしまうこともある皮を、主役にする。友人が大切に守ってきた木の実を、私の手で新しい美味しさに変えていく。これは、ささやかな「手仕事のバトン」でもあります。
ポンカンはオレンジに比べて皮が薄く、デリケート。 その個性を壊さないよう、ゆっくりと、対話するように作業を進めました。

4日間、鍋の中の太陽を見守る
オランジェット作りは、焦りが禁物です。
1日目: 丁寧に洗い、皮を傷つけないよう茹でこぼして、雑味を取り除きます。
2〜3日目: 少しずつ糖度を上げていく工程。一気に煮詰めず、一晩寝かせてはまた火を入れる。ゆっくりと蜜が細胞の奥まで浸透し、皮が透き通っていく様子は、まるで魔法のようです。
4日目: じっくり乾燥させ、最後にビターなチョコレートを纏わせて、ようやく完成。
試作が教えてくれたこと 完成した試作品を食べて驚いたのは、その「ジューシーさ」でした。 皮が薄いポンカンだからこそ、蜜の含みがよく、口の中でとろけるような食感。無農薬ならではの、雑味のないストレートな香りが鼻を抜けます。

4日間、キッチンに漂っていた甘酸っぱい香りは、冬の暮らしを温かく彩ってくれました。
効率やスピードも大切だけれど、誰かの想いを受け取り、時間をかけて形にする。 そんな「たべるとくらすと」らしい豊かさを、この試作品から再確認することができました。
いつの日か皆様に紹介できるといいな。
