
山あいに暮らす生きものの動きや、畑に現れる虫たちの変化は、気候の揺らぎと重なりながら年々その姿を変えています。
時に作物を守るために電柵を張り、犬や馬とともに畑を見回り、土地に合う栽培方法を探しながら実りをつないできたつくり手たち。
生きものと土地の営みに寄り添いながら生まれた今年の実りをご紹介します。
夏の猛暑と野生動物の脅威:健やかさを守る養鶏の知恵
津軽さとやま農場(青森県 / 養鶏)
猛暑は北国の畜舎にも大きな負担を与え、鶏や羊が弱らないよう夜遅くまで水を替えたり、扇風機を増設したりと細やかな工夫を続けた一年でした。秋には野生動物が近づき、命を守るための対策も欠かせません。効率よりも動物の健やかさを優先する、この農場らしい営みが今年の卵の実りを支えています。
中山間地での挑戦:犬と馬を緩衝帯に利用する独自の獣害対策
horsemade landscape(北海道 / 農業)
気温や湿度が年々上昇し、とうもろこしや大豆が狸や鹿に食べられる被害もあった年でした。犬や馬を放牧して畑のまわりに緩衝帯をつくるなど、中山間地ならではの工夫を重ねています。気候が穏やかとはいえない時代でも、土地に合わせて育て方を変えながら最善を尽くす姿が、今年の実りにつながっています。
自然農で挑む気候変動:低温と高温の連鎖を乗り越える連日の水やり
vegety mimase(神奈川県 / 農業)
苗を植える時期に季節外れの低温が続き、多くの苗が枯れてしまった春。その後の高温と雨不足で植え直した苗を守るため、連日の水やりが欠かせませんでした。自然農の畑では虫食いや不揃いも増えますが、身体がよろこぶ野菜を届けたいという思いで、地球や微生物と共存し続けています。
予測不能な天候とイノシシの侵入:畑を守る日々の判断と工夫
あしがらハーモニー畑(神奈川県 / 農業)
梅雨時期のずれ込みや秋の天候不順など、季節のリズムが読みにくい一年でした。電気柵を外したわずかな隙にイノシシが侵入し作物が掘り返されることも。さらに今年は新たな害虫も現れ、作物を守るために日々判断と工夫が必要でした。それでも畑を整え、季節ごとの実りを大切に育てています。
病気と獣害:自らの農園を守る体制を整える
自然農園よりこんぼ(高知県 / 農業)
暑さが長引き生姜の病気が広がるなど、栽培の難しさが際立った一年でした。昨年の獣害をきっかけに狩猟免許を取得し、自ら畑を守る体制も整えています。農薬を使わない自然農の畑はゆらぎも多いですが、土地に寄り添いながら野菜本来の力を引き出しています。
果樹栽培の困難:食害対策と丁寧な梱包で収量を守り抜く
ヒャクマス(大分県 / 農業・果樹)
猿や鹿の食害が続き、見回りや音の出る装置で対策を行った一年でした。果物は傷みやすく、梱包しても輸送時に揺らぎが出ることがありますが、それでも一つずつ丁寧に仕上げています。気候の影響で収量が減る年もありますが、お客様の声を励みに果樹と向き合っています。
無農薬栽培の難しさ:電柵と網で鳥獣害から作物を守る日々
Kumano はしもと屋(三重県 / 農業)
猪や鳥に狙われやすい作物を電柵や網で守りながら育てた年でした。無農薬栽培は自然に委ねる部分も多く、毎年同じようにいかない難しさがありますが、積み重ねた経験を活かしながら丁寧なものづくりを続けています。今後は自社商品の幅も広げていきたいと考えています。
日本の食を守る決意:気候変動と猪鹿の脅威に立ち向かう米農家
ろのわ(熊本県 / 米・小麦)
集中豪雨や冬の暖かさ、高温など気候の揺らぎが続く中、猪や鹿に備えながら畑を守った一年でした。自然条件が厳しくなっても農業を続けるのは、日本の食を守りたいという思いがあるから。信頼してくれる“かかりつけ農家”のような存在を目指しています。
コウノトリが戻った田んぼ:自然農法の力が生み出す雑味の少ない実り
つちのと舎(島根県 / 農業)
雨が少ない中でも自然農法の田んぼは力を見せ、例年より雑味の少ない実りとなりました。今年は初めてコウノトリが訪れ、生態系が戻る手応えもありました。収量が少なく販売はお休みですが、冬の湛水や土づくりを続け来季の実りに向け静かに田んぼを整えています。(※例年の販売:秋〜冬頃)
土地や生きものとともに営まれてきた今年の実りが、今日の食卓とそっとつながりますように。
今年の気候が、他のつくり手たちの畑や田んぼにどのような影響をもたらしたのか。その一部をご紹介します。 気候が揺れた年に、それでも続くつくり手の営み


