2026/03/16
熊本県玉名市の自然豊かな里山で、無肥料・無農薬で育てた自家製米粉を使ったグルテンフリーのお菓子を作っています。
「さとのケーキ」は、私が始めたケーキづくりに、弟がコンセプトを考え、母が店舗で販売を支えてきた、家族で立ち上げた小さなお店です。


私たちの原点は、20数年前に父が始めた無農薬米づくりにあります。
当時、父は早期退職を機に、自分たちが食べる分のお米を無農薬で育て始めました。
同時に、地域の人が集まる場所として敷地内に小さなお店「庄屋」をつくり、人がつながる場を育ててきました。
休耕地を借り、仲間と共に続けてきた米づくりは、やがて里山の暮らしそのものを支える活動へと広がっていきました。


私は、幼い頃からお菓子作りが好きで、いつか自分のお店を持ちたいという思いを抱いていました。
長年、半導体関連の工場で働いてきましたが、
「一度きりの人生、本当にやりたいことを形にしたい」
そう思い、独立を決意しました。
弟もまた、東京での会社員生活を経て、両親の高齢化をきっかけに故郷と向き合うようになりました。現在は、里づくりプロジェクト「あたらしさと」 を立ち上げ、地域の暮らしを未来につなぐ活動を行っています。
「さとのケーキ」は、こうした家族の歩みと里山の営みの中から生まれました。



私が米粉のケーキ作りに取り組み始めたきっかけは、身近にいたグルテンフリーの生活をされている方とアレルギーのある甥っ子にも「自分の作ったケーキを食べてもらいたい」という想いからでした。
アレルギーのある子ども達の中には、ケーキのような“特別なお菓子”を自由に楽しめない子もいます。米粉のお菓子も「パサパサしているけれど仕方なく食べるもの」と思われがちです。
だからこそ、アレルギーのある人もない人も「こんなに美味しいケーキもあるんだ」と感じてもらえるようなお菓子を作りたい。そんな思いで、米粉のケーキ作りに挑戦してきました。
しかし米粉は小麦粉とは性質が大きく異なり、思うような食感を出すまでには多くの試行錯誤が必要でした。
使用している米粉は、里山の田んぼで弟が、無肥料・無農薬で育ててきたお米です。お菓子に使える細かい米粉に挽くため、阿蘇にある製粉機まで足を運び、製粉しています。
そうして少しずつ改良を重ねながら、「米粉でも美味しいケーキを作れる」という手応えを感じられるようになりました。


私たちのケーキづくりに欠かせない存在が、地元・玉名にある玉名牧場です。
この牧場を営む矢野さんは、もともと父の会社員時代の同僚でした。牧場を始める際、父が地元の土地を紹介したことがきっかけとなり、長いご縁が続いています。
当時から矢野さんは、農薬や化学肥料に頼らない農業や、自然と調和した畜産のあり方を模索されており、その姿勢は父にとっても大きな影響となりました。父が無農薬での米作りを始めた背景には、矢野さんの実践から学んだ思想があったと聞きます。
そうしたつながりの中で生まれたのが、玉名牧場のジャージー牛乳を使ったケーキづくりへの挑戦でした。
しかし、この牛乳を使ったお菓子作りは、決して簡単なものではありませんでした。
一般的なホルスタイン種の牛乳と比べ、玉名牧場のジャージー牛乳は、自然な青草のみを食べて育った牛から搾られるため、さらりとした口当たりでありながらも風味が豊かという特徴があります。その一方で、加工という観点では扱いが難しく、特に冷凍を前提としたチーズケーキでは、水分の分離が起きやすいという課題がありました。
何度も試作を重ねる中でたどり着いたのが、ジャージー牛乳をそのまま多く使うのではなく、発酵の力を活かし濃縮した自家製クリームチーズの割合を高めることで、コクがありながらも後味の軽い、深みのある味わいに仕上げています。
この工程を経ることで、牛乳本来のやさしい風味を活かしながら、冷凍にも耐えられる安定した質感を実現することができました。
地元のつながりから生まれた素材を、時間と手間をかけて丁寧に活かす。
このケーキには、そんな地域との関係性と、試行錯誤の積み重ねが詰まっています。

「甘すぎなくて食べやすい」
それは、私にとって最大の褒め言葉です。
バターを使わず、米油を使用し、砂糖はきび砂糖を選ぶなど、体に負担の少ない素材選びを大切にしています。
アレルギーのある方や、甘いものが苦手な方からも「これなら食べられる」と喜んでいただけることを目指しています。
まだ小さな店ですが、いつか地域の方々が気軽に立ち寄り、「ちょっとケーキを買いに行こう」と思っていただける、日常に溶け込む存在になりたいと願っています。
弟が取り組む「あたらしさと」は、外から訪れる人と地域をつなぐ活動です。
お試し移住の受け入れや、地域文化に触れる機会づくりなどを通じて、里山に新しい関係性を生み出しています。
私も、お菓子を通じて、人が集まり、語らいが生まれる場を育てていきたいと考えています。
現在は少量生産のため、まずはバスクチーズケーキからの販売となりますが、
今後は、季節の野菜を使った焼き菓子や米粉のカステラなど、少しずつラインナップを広げていく予定です。
里山の恵みと家族の営みを、お菓子という形で届けていきたいです。



熊本県玉名市の里山にある小さな工房で、自然素材を活かしたやさしいお菓子を作っています。
材料は、自家栽培の米や栗、山水で育てた作物など里山の恵みと、地域で顔の見える生産者さんから直接仕入れたものを中心に使用しています。
グルテンフリー、バター不使用、きび砂糖を用いた、体に負担の少ない穏やかな味わいが特徴です。季節の素材を大切に、少量ずつ丁寧に製造しています。
まずは、発酵と放牧ミルクから生まれたバスクチーズケーキをお届けします。安心して楽しめる、日々に寄り添うお菓子を目指しています。

