まえむき。について

遊佐町で始めた「まえむき。」の農業

結婚し帰省をしたときにたまたま訪れた、その後農業の師匠になる山澤清さんの農業実験ビニールハウス。そこでたまたま食べた、トマトの木から採ってそのまま食べた伝統野菜のトマトの味に感動を受けたこと。それが伝統野菜を栽培しようと思ったきっかけでした。 伝統野菜は、品種改良された現在の野菜のようにとっても甘くないですし、ちょっとほろ苦かったりたまにエグ味があったりしますが、それが野菜が本来持っている「うま味」だし、ずっと昔から受け継がれてきた「命の味」だと思っています。

そんな「味」のある野菜を、自分たちが「これは旨い!!」「これを食べて生きていきたい」と思ったので、これからずっと作っていこうと思いました。

縁があり山形の北のはずれの遊佐町というところに移住し、ずっと使われていない、耕作放棄された畑を見つけて、土地にいるすべての生き物を大切にしながら、ゆっくりと、自分たちで開墾しました。

薬は使わずに。肥料も使わずに。

大変なことばかりですけど、草も動物も虫も微生物も、畑にいるすべての命たちと一緒に、今日もじっくりと楽しく、野菜を育てています。

全国の伝統野菜、固定種野菜を栽培しています。

ごく一般的なスーパーで売っているのは、F1種子と呼ばれるタネから栽培された野菜です。F1種子とは、例えば形の良いものと病気に強いもののような、異なる特性を持つ親を人為的に掛け合わせて作った種です。F1の種から育った野菜は、みんな同じような成育のしかたをし、同じような形になり、そして同じ時期に収穫できます。つまり、出荷しやすく、売りやすいので、現代最も多く栽培されている野菜です(遺伝子組換処理ではありませんよ)。多くの方の口に合うように一般にクセがなく、食べやすい味になるように交配されていることもあります。

ですが、『まえむき。』では全国各地の人々が、昔から守り、受け継ぎ、栽培してきた伝統野菜と呼ばれる野菜と、親から子・子から孫へと代々同じ形質(味や形)が受け継がれ固定された、固定種と呼ばれるタネからだけ、野菜を作っています(ちなみに伝統野菜も固定種に当たります)。

昔から受け継がれてきたタネは一粒一粒に個性があり、発芽の時期や形、生育のスピードがなかなかそろわず、早く育つものもあれば遅く育つものもあります。葉の形を見たり、成育の状況を見ながら、大きくなったものから収穫する必要があるため栽培にコツが必要だったりしますが、味に特長のある種類が多く、野菜それぞれが持つ独特の味わいが楽しめ、そしてなによりも野菜の味がとても濃く美味しいと思っています。実際に、私たちはこの伝統野菜を食べ、農業をやっていこうと思うようになりました。ちなみに野菜そのものにとてもいい味があるので、ちょっとした調理でもと〜っても美味しく変化してくれます。農業を始めてから、味と風味の濃い、いろいろな地方の伝統野菜が食べられるようになって、私たちの食卓はかなり豊かになりました(笑)。

現在、多くの人が考える「美味しい」は、甘くて柔らかいもの、生で食べられるもの、だと思います。ちなみに昔の大根なんて堅くて辛い。なぜかというと細胞のひとつ一つが緊密で均一だからです。F1種の大根だと、固定種で種まきから収穫まで3〜4ヶ月かかるところを2ヶ月で収穫してしまう。2ヶ月で成育するということは、その分ひとつひとつの細胞が水ぶくれのように大きくて柔らかく、その細胞を維持するために細胞壁が強くなって崩れるのを防ぐ。だからいまの大根を大根おろしすると水分でペチャペチャものが出てきて、おろし金の方には繊維が残って付いている。昔の大根をおろすと均質なものになります。いまの大根はすぐに煮えますが、昔の大根は時間をかけると辛みが甘味にかわる、味も全然違うのです。

正直に言うと、とっても甘いわけではないし、ものによっては若干エグ味があったりします。でも、野菜自体の味がとっても濃く、飲み込んだあとでも、しばらく間後味の余韻が続いていく、そんなうま味のある野菜だと思っています。

そして、いくら無農薬や有機肥料やその他の栽培方法で育てたとしても、味を決める要因の8割はタネだと思っています。だから、まえむき。では伝統野菜や固定種にこだわって野菜を育てています。

無農薬で、肥料もなるべく自然のものから自分たちで作っています

ご近所さんから野菜のおすそ分けをいただいたときに、「これは薬を使っていないから大丈夫よ。」と言われることがあります。冗談に聞こえるかもしれませんが、田舎ではよく聞く話だったりします。でもこれって結構怖い話ですよね。農家の方も危険を承知で農薬や除草剤を使っているということなのですから。

ただ、農薬や除草剤を使うことを肯定するわけではありませんが、これは仕方のないことだと思います。スーパーで売っているものって虫食いの跡のないキレイな野菜ばかり。そういう野菜じゃないとスーパーなどでは取り扱ってくれないので、キレイな野菜を作るためにどうしても薬を使うことになるのです。農家だって、野菜が売れないと生活ができなくなりますからね。あと、安価で大量に生産するためには、どうしても除草などの手間も時間もかかる作業を省く必要があるとか。そんな理由もあります。

でも、『まえむき。』では農薬も除草剤も使いません。 化学肥料はもちろん、鶏糞や牛糞などの動物性の有機肥料もなるべく使いたくないし、土壌にそれらの未熟な成分が残っていて、成長とともに野菜に吸収されるのも嫌だったので、10年以上耕作放棄された土地を探し、農地として開墾しています。

使わない理由は、、、ただ単に「使いたくないから」です。

農薬を使わないので、葉っぱが虫食いの穴だらけになり、「こんなの売れるか!!」なんて思って嫌になることもありますが、そもそも虫も食べられないようなものを食べることが如何なものかと思いますし、虫も含めていろんな生き物がいる畑のほうがなんか楽しいなと思うんです。農作業や収穫しているときに、チョウチョとかトンボが体のどこかにとまったりすると、なんだか癒されますよ(笑)。 本当は野菜と関係のない場所の管理のためには、除草剤などを撒いてもいいのかもしれませんが、それでも農薬も除草剤も使わなくてもいいかなぁと思います。

まぁ正直農薬というのは、結構デリケートな存在だなと思います。私の住む町でも、量の大小はあってもだいたいの農家さんが農薬も除草剤も使用しているからです。どんどん高齢の方が多くなってきているので、農薬や除草剤を使用しなければ体力的に本当に管理ができないといったケースが大半だと思います。いろいろな理由があると思いますが、それぞれの立場で、正しいと思って判断しているのでどちらでもいいのだと思います(無農薬で栽培するのも同じです)。まぁ、感覚としてはタバコみたいなものかなと思っています。自分は吸わないけど、友達がヘビースモーカーでも別に構いませんよね。

ちなみに、鶏糞などの有機肥料や、化学肥料をなるべく使いたくない理由は、単純にそのほうが美味しいのでは?と思うのと、どんな餌を食べているのか、どのような環境で育てられているかわからないからです。餌として食べていたものの中に、病気にならないようにするための抗生物質とかホルモン剤のようなものとか入っていたとしたら、糞の中にも残っているだろうし、それが堆肥にも残っているだろうから、それが嫌だというのもあります。農業のイロハを教えていただいた師匠などからは、鶏糞などの有機肥料を、「使わないと野菜が育たない!土地もどんどん痩せていくだけから、1㎡あたり、毎年2kgは入れろ!」何て言われるんですけどね。使い方の問題もあるのでしょうけど、動物の糞から作った肥料を使った野菜には、嫌なエグ味があるような気がするんです(ただの主観ですよ)。作った野菜は販売もしますが、もちろん自分たちも食べるので、、、どうせなら自分が美味しいと思うものを食べたいですからね。

さらにちなみに、このような栽培を行っている農家さんは有機農産物JAS規格は取得し、野菜に表記して販売していることが多いと思うのですが、私たちは取得しません。なぜかというと、、、JAS規格を取得するには結構な額のお金と手間がかかるんです。それを野菜の価格に上乗せするのはなぁ…なんて考えから取得しないことに決めました。でも、間違いなく無農薬・無化学肥料不使用で野菜を作っています。