風景をつくる、人と馬の仕事 horsemade landscape
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「昔のお百姓さんたちが、明日もまた頑張ろうと思えたのは 日々目の前に広がる風景に美しさがあったからだよ。」
「人間は風景も食べて生きている。 食べているのは食べ物だけじゃないよ。 だから人間は風景に責任を持たなくちゃならない。」
「風景」にまつわるふたつの言葉。 ひとつは、地域のお年寄りから聞いたもの、 ひとつは、ある詩人が話してくれたことです。
風景とは、様々な命の働きの結晶。 文化や価値観が長い時間をかけて映し出された結果。 そしてその風景を「食べて」また次の命が育っていくという循環。
馬の燃料は水と草といったクリーンエネルギー、そして排気ガスの代わりに 良質な堆肥を生み出します。 自然環境への負荷の少ない持続可能な技術である馬耕や馬搬が今の時代だからこそ、 新しく面白く未来を拓いてゆける。
私たちは馬と人との共同作業による農林業を通して、健やかな土そして水を守り命が循環する、美しい風景をつくることを目指しています。
私たちと馬との出会い
高知県の山間地で田畑で食べ物を育て、山で薪となる木を切り、炭を焼き、 自給的な暮らしをしていた私たちは小さな手押しの耕運機で田んぼを耕しながら 「いつかはこれが馬でできるようになる」となんの根拠もなく確信していました。 願えば叶うもので、2017年秋、一頭の農耕馬との運命的な出会いがあり、 そこから馬と働く暮らしがはじまりました。
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馬との暮らしを続けていく中で、様々な失敗とそれを上まわる感動を体験しました。 田畑を共に耕す、山から木を運ぶ、さらには草刈り作業に追われていた場所に 放牧することで除草作業をしてくれる・・・ 馬と働く世界にすっかり魅せらせた私たちは この喜びをもっと広げていくにはどうしたら良いかと考え、 相方の馬「花雪」を連れて北海道に移住しました。 農の暦も適した種も何もかも違う環境で再び一からのスタートでしたが、 馬と暮らす文化のまだまだ残る土地で、より馬の学びを深めたいとの思いで 高知から家族と馬をはじめとする動物たちと北海道に大移動を決めました。
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オシアンクルの森で暮らし働く
私たちは今、豊浦町の山間地に広がる田畑と森で馬と共に働き暮らしています。 「オシアンクル」と名前をつけたそのフィールドは、周囲をぐるりと川に囲まれた 1.5ヘクタールの田畑と、1ヘクタールの森からなります。 ここで、私たちは馬と共に循環する農園を営んでいます。
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馬と人との共同作業で命が循環する、美しい風景をつくることを目指して
今、機械化できない農地や作業車の入れない山は放棄され荒れていくということが 全国各地で起きています。 昔は、すべて人が馬や牛の大型家畜というパートナーと共に維持してきた場所です。 馬と働く可能性は、そんな風に「条件不利地」と言われる場所でこそ発揮できます。 また、そのような場所は豊かな水源や多様性に富んだ自然環境が残っています。
私たちは北海道の山間地で馬との循環する仕事と暮らしを通して、 この豊かな環境を維持し残していきたいと考えています。
・馬耕・ 様々な道具を馬にひかせ、耕す、均すなどの田畑での作業を行います。 犂(すき)、馬鍬(まんが)、プラウ、ハロー(砕土器)など、かつて使われていた道具を主に使いますが、状況に応じて必要なものを作ることもあります。 土をかえす時にも重機のように踏み固めることがないので、息ができる健やかな土壌環境を育てることができます。 ここでは麦、米などの穀物を主に育て、副産物としての藁は馬の飼料や敷料、そして堆肥となり最後は土に還ります。
・馬搬・ 機械が入らないところでも、道のないところでも、馬と入れる場所であれば木を引っ張り出すことができます。 この森では枯れた木や倒木、間伐したものを馬に運んでもらい、サウナや調理の薪、きのこのホダ木、木工など様々に活用します。
・放牧除草・ おそらく、馬たちが仕事の中でいちばん好きな作業。森へ放牧し、はびこるクマ笹などの下草を食べ自由に歩き回ります。 人が刈り払い機で行うそれは「たたかい」に近いですが、馬は喜びと共に(想像)休むことなく「仕事」を続けます。 馬たちが事故や怪我なく安全に動きつつ、こちらの望む結果が得られるように、人が「囲い」をデザインします。 取り込まれた草は彼らの「燃料」となり、馬耕や馬搬の作業へエネルギーが回されます。 そして、ガスの代わりに排出される馬糞はやがて土に還り、「食べられる森(フォレストガーデン)」の栄養となります。
馬という大型家畜を軸として循環する有畜複合の農業が 美しく維持できる規模はどれくらいだろう。 そのことを実践を通して模索しています。
馬の力、草食動物であるということ、人の技術、想像してデザインする力、 人と馬それぞれのできること、得意とすることを合わせて、 「昔ながらの」「伝統的な」というところからひとつ歩みを進めた 「古くて新しい」農と暮らしのあり方がきっとこの先にあると思っています。
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