「ただいま~」
学校から帰ってくると、梅ジュースが出てくる。梅にハチミツをいれてつくった原液に水を入れて飲む。
母が家の梅に、近所の蜂蜜やさんから買ってきたハチミツを入れ、瓶の中を下からよくかき回していたのを覚えている。冷蔵庫の原液が無くなると、大きい瓶から補充する仕組みだ。北西の日が当たらない部屋に梅のハチミツ漬けはいつもたたずんでいた。
家には梅ジュースしかない…
すごくたまに飲むカルピスは格別だったが、冷蔵庫には年中梅ジュースしかなかった。近所のお友達の家には、色んなジュースやお菓子があるのに、家には全く無かったんだ。周りをいつも羨ましく思っていた、無いものをねだり、、人はどこまでも比べたがる生き物かもしれない、自分の今の幸せに気づけないでいるのと似ている気がする。
それがとても贅沢だったと気づいたのはとても最近の話だ。
自然食品のお店しか調味料などを買いに行かない母、無農薬野菜を作る母、パンを作る母、毎朝にんじんとリンゴのジュースを作る母、こだわりすぎて、井戸を畑に掘った母、母の愛はどこまでも家族の健康のために広がっていった。
家族への愛の出し方、母にとってそれは質素な食事だったのかもしれない。家の食卓は母があまり料理が得意ではなかったから質素だったかもしれないが、ただ一つ一つにこだわりがあった気がする。
梅ジュース、質素な味、とても贅沢な味、今になってやっと解る事ってある。
時が経たなければ理解できないことが沢山ある気がする。
母の愛に感謝して今日を終えようと思う、ありがとう、不器用な母へ