畑のそばで、 父がくぬぎの木を切っていました。
なかなか立派に育った木なので、 「なんで切るん?」 と聞いてみると、 返ってきたのは、予想外の答えでした。
「大きくなりすぎると、 ともつゆで稲が育たんくなるから」
……ともつゆ?
初めて聞く言葉です。 雨は雨やろ、と思いながら もう一度聞き返してみました。
どうやら、ともつゆとは 降った雨がいったん木の葉に溜まり、 あとから落ちてくる水のことらしいのです。 それが繰り返されると、 うまく育たなくなるのだとか。
「ともつゆって、どんな字書くん?」 と聞くと、 父は少し考えてから 「そんなんは、知らん」 と、あっさり。
でも、迷いはありません。 当たり前のことのように 木を切り、説明を続けます。
経験というより、 どこかで聞いて、 見て、 確かめてきた話。 父いわく、 こういう話は、まだまだいっぱいあるそうです。
山の上にある deai orchard(デアイオーチャード/出合オーチャード)では、 教科書には載っていない言葉や理由が、 畑のあちこちに残っています。
クヌギの切り口を見ながら、 「ともつゆ」という言葉だけが 頭の中に、ぽつんと残りました。
知らない言葉を知る朝は、 いいですね。
