朝の台所で、 父が静かに食パンと向き合っていました。
よくある朝ごはんの風景、 かと思いきや、 近くで見ていると、どうも様子が違います。
ブルーベリージャムは右側に一列。 バターは左側に一列。 どちらも控えめな量で、 なぜかとても几帳面。 全面に塗る気配は、まったくありません。
「そこだけ?」 と聞きたくなるのをこらえて見ていると、 父は何のためらいもなく その食パンを、すっと半分に折りました。
折る。 切らない。 折る。
理由は特に語られません。
そして一口。 かじった断面で、 ブルーベリージャムとバターが ちょうどよく合流します。 どうやら、このための配置だったようです。
このブルーベリージャムは、 畑で採れたブルーベリーから作ったもの。 少量でもしっかり味がするので、 父としては 「これで十分」なのかもしれません。
山の上にある deai orchard(デアイオーチャード/出合オーチャード)では、 畑の仕事だけでなく、 朝ごはんにも それぞれのやり方があります。
父はパンを食べ終えると、 何事もなかったように 「ごちそうさま」と一言。
謎は解けたような、 まだ残っているような。 そんな朝ですが、 今日も一日は 静かに、ちゃんと始まりました。
