朝の登校時によくお姉さんが草の遊びを教えてくれました。
中でも感動したのが数珠玉です。
道の一箇所にだけこの数珠玉が生えている場所がありました。
数珠玉の真ん中に「芯」があり、それをつまんで引き抜くと、穴が空いて
ビーズのように糸を通せるようになるのです。
同じ場所に生えている細い軸のような草にその数珠玉を通していくのです。
言えばとても単純でシンプルな遊びです。
しかし、実はそうではないのです。
朝の登校は学校までの道のりは長く小一時間を要します。
冬の寒い時期は、集合時間ギリギリにしかみんな集まってきません。
そもそも集合時間の設定が、子供ですから全く余裕なしの「遅刻するか否か」の
ギリギリの時間です。
寒すぎて、それぞれがギリギリの集合時間にようやく集まり出発です。
なので、全員超早足登校です。
登校中に氷が張っていても立ち止まることなく先頭のお兄さんが踏んだ氷を並んでいる列の順番通り
それぞれが氷の割れていない箇所を瞬時に見極め踏み通過して行きます。
一瞬たりとも立ち止まって「ワーワー」氷を踏んづけて遊ぶなどあり得ません。
そんな遅刻とのせめぎ合いのピリッと張り詰めた登校ですから
数珠玉だって、落ち着いて摘むなどあり得ません。
歩くスピードを変えず、通り過ぎる瞬間にもぎ取り、ひもの草をちぎる!
失敗すれば、数珠を作るお楽しみは本日無し。という朝からちょっぴり残念な日になるのです。
片手で摘み取った数珠玉をスカートのポッケに入れてひとつ取り出しては
芯を引き抜き、紐代わりの草に通します。
ただひたすら。
そうしているうちに学校へ着き、数珠は完成したりしていなかったりでスカートのポケットに仕舞われます。
それだけ。
あんなに厳しい条件下だからこそとても楽しかった。
そんな数珠玉の思い出です。