かたくちイワシはアンチョビの原材料なんです
あじ屋のある北浦町は古くから中型巻き網漁業が地域の基幹産業だったのでイワシはとてもなじみ深いものでした。
イワシには大きく分けると『真イワシ』『うるめイワシ』『かたくちイワシ』の3種類があります。今日ご紹介する『かたくちイワシ』は意外と身近な存在で、誰もが知っている加工品へと変身します。小型のものは『ちりめんじゃこ』、中〜大型のものは『煮干し』『めざし』になります。
そして海外では古くから『アンチョビ』の原料として使われてきました。
最近ではめざしってたべませんよね・・
私たちが住む北浦町(そして日本中の港町)では『かたくちイワシ』を腹肝をつけたまま、まるごとを冬の寒風で乾し上げた『めざし』は、冷蔵庫から取り出してさっとあぶるだけで食べられるインスタントな保存食として、主に昼のごはんのお供として食べられてきました。
私たちが幼かったころ、土曜日の半日授業の帰り道、どこからともなくこの腹肝のこげた香ばしい香りが漂ってきたものです。しかし悲しいかな、時代の流れ、このにおいを今の人たちは嫌うようで、すっかり近頃は人気がありません。
実際、私も小さいころはあまり好きではありませんでした。「なんか『めざし』って、年寄りがたべるもの」って思っていました。
アンチョビを作ろうと思ったワケ
あじ屋の製造元であるいそ田では3年程まえから、この『かたくちイワシ』を原料に『アンチョビ』の製造を行っています。
しかし正直にいうとレストランやスーパーで目にする『アンチョビ』と、地元で獲れる『かたくちイワシ』を結びつけて考えてはいませんでした。
かたやパスタ・ピザ等に使うおしゃれな食材、かたや粗食の代表とでも言うべき昔の保存食。気付いたきっかけは市販のアンチョビをつかってパスタをつくっていたときのこと。単純に入れる順番を間違えてニンニクよりさきにアンチョビのみをオリーブオイルで炒めていたときに、ふとあの土曜日の下校の風景が頭によみがえってきました。「この懐かしいにおいは・・・!」
かくして、アンチョビの製造を思い立ち今に至る訳です。(アンチョビの製造についても奥深いものがあり、いろいろと試行錯誤があったのですがそれはまた別の機会に)
呼び名を変えるとあら不思議
余談ですが私自身、『アンチョビ』をつくるようになって『めざし』が好きになりました。軽く、ほんとに軽く炙って腹の皮がぷつっと破けた瞬間、腹肝がまだ半生の状態を頭からかぶりつき、ビールで流し込む。
自宅で友達と飲むときに酒肴として出すとあっという間に無くなりますよ。
これって見方を変えれば『ジャパニーズ・アンチョビステック』です。
『めざし』ってお洒落(笑)