神社では、祭りの際にお餅まきがあります。
これが子どもにとっては、楽しすぎる行事です。
神社の大きな岩の上から、桶に入れられた真っ白のお餅が
掛け声とともに一斉に撒かれます。
おじいちゃんやお父さんたちは、少し、相当お酒が入っているので
大盛り上がりです。
お酒くさい大人の最前列は子どもたち。
優しくお餅をたくさん蒔いてもらいます。
これを拾うのがそれはそれは楽しくて楽しくて。
みんな無我夢中で一個のお餅に一斉に手を伸ばします。
でも、大人はそっと手を緩め子どもに
子どもは、自分より小さな子に持たせてやります。
誰が決めたでもなく、みんなそれぞれに取り合うようにみえて与え合う。
この優しさが、子供心に強く印象に残っています。
メインは「傘穀」と言われる顔より大きなお餅一枚ずつ
空高くに放られます。
これは、男衆の戦いです。
こちらは、酔いもまわった男衆が勇ましく体をぶつけて取り合います。
子供心に「怪我しませんように」と心でお願いしながら
お餅の行方を見守ります。
鈍い音が地面を伝わって、足元から響きます。
一瞬皆が闘志をあらわにしますが、傘穀が手に渡るとパッと笑い顔にそれぞれがなるので
幼い子供としては、それが何より安堵する。という具合になります。
家に帰ると、おばあちゃんとお母さんが、お餅についた土を綺麗にして
今年のお餅拾いの話を賑やかにします。
夕飯の暖かな湯気と、楽しそうな台所の声。
神社の神様も喜んでくれていたでしょう。