
打ち水-涼を求めて
朝いちばん、まだ空気がひんやりとしているうちに、青々とした草をたっぷり刈って運びます。 束ねた草を抱えて鶏舎へ向かうと、鶏たちはすぐに気づいて駆け寄ってきて、夢中でついばみはじめます。 葉を選んでじっくり味わう子、くちばしいっぱいにくわえて走る子、それぞれの過ごし方があって可笑しくて、愛おしくて。 静かな朝の空気のなかで、草の緑と、鶏たちの茶や白や黒が、やわらかく交じりあいます。
そして、陽が高くなりはじめた昼前、今度は打ち水の時間。 鶏舎の中や放牧場の地面に、冷たい水をたっぷりと。 水が撒かれたところから、じんわりと熱が引いていきます。 舞い上がる水しぶきに誘われて、鶏たちもぱたぱたと集まってきて、 濡れた地面にしゃがみこんだり、水たまりにくちばしをちょんちょんとつけたり。 ほんの少しの水でも、ちゃんと涼を見つけて、楽しんでくれます。
夏は、ちいさな気づきと工夫の積み重ね。 自然に寄り添いながら、鶏たちのペースで、今日もゆっくりと。
— 放牧鶏「暖鷄」 —

