梅雨の気配と、鶏たちの声と。

しっとりと湿気を含んだ風に、季節の移ろいを感じる頃となりました。
畑の緑はぐんと濃くなり、空には梅雨の気配が漂っています。
そんな中でも、鶏たちは変わらず力強く、時には大きな声で鳴きながら、
今日も私たちに貴重な卵を届けてくれています。
日増しに暑さが増すこの時期は、体調を崩しやすくなるため、
鶏たちの健康管理にはいっそうの注意が必要です。
いのちを預かるということは、当たり前の毎日を、
当たり前と思わずに手をかけることなのだと、
改めて感じています。
さて、TAMAGOMANIAから、新しい商品が生まれました。
「放牧卵のやさしいお菓子箱」です。
平戸の自然の中でのびのび育った鶏たちが産んだ卵をたっぷり使い、
ひとつひとつ丁寧に焼き上げた焼き菓子たち。
まるで物語の詰まった小箱のように、手にとって開けたとき、
ふっと気持ちがほどけるような存在になれたらと願っています。
TAMAGOMANIAは、「たまごと、まっすぐに。」
そんな想いから生まれた、小さなスイーツブランドです。
平戸の自然の中で育った鶏たちの卵。
その力強くてやさしい味わいを、できるだけそのままに。
余計な飾りはせず、素材と静かな情熱で形にしています。
口にしたとき、ふっと心がほどけるような。
そんなお菓子を、今日もひとつずつ丁寧に。
食べものを通じて、心の中にも小さな灯りを届けられるような
そんなものづくりを目指しています。

昨年から続く野生動物の被害で、
多くの鶏たちの命が奪われました。
養鶏を続ける意味を見失いそうになり、長く絶望にありました。
でも——
初心を、思い出しました。
なぜ、鶏たちと向き合い、卵を届けようと思ったのか。
それは、ただ「おいしい卵」を届けたいのではありません。
自然の中で自由に生きる鶏たちの命が、
どれほど健やかで、どれほど尊いものか。
そのぬくもりや物語を、卵を通して感じてほしかったのです。
ひとつの卵が、誰かの暮らしの中で
やさしさやぬくもりを生むように。
そんな願いを胸に、日々向き合ってきました。
もう一度立ち上がろうと思えたのは、
この卵に込めた想いが、ずっと自分の中で生きていたからです。
届けたいのは、卵という“食べもの”を超えた、
いのちの証そのもの。
そして、自然の中で静かに育まれた時間です。
たくさんの壁がありながらも、
ここまで来ることができたのは、
支えてくださる皆さまのおかげです。
あらためて、心より感謝申し上げます。
そしてこれからも、あきらめずに、
自然とともに、鶏たちとともに、
丁寧に、まっすぐに歩んでいきます。
