季節を巡るたび、返される生命の循環。

自社農園には、シンボルツリーとして大きく枝を広げる杜仲の木が2本あります。春の日差しが心地よくなる4月上旬、枝先には控えめで可愛らしい花を咲かせ、梅雨を迎える頃には固く締まった実をつけます。初夏の風に揺れるその姿は、季節の移ろいとともに命を育む、杜仲ならではの静かな力強さを感じさせてくれます。


12月、農園が本格的な冬を迎えるころ、私たちはシンボルツリーがある畑の枯れ枝払いを行います。すると、足元には無数の杜仲の種が落ちていました。こんなにも多くの種を落としても、自然界で発芽できるものはほんのわずか。それでも杜仲の木は、次の世代へ生命をつなぐため、ひとつでも多くの可能性を未来へ託そうと種を実らせ続けています。
この箕輪町に杜仲の木がやって来てから、季節を巡るたび、変わらず繰り返されてきた生命の循環。人知れず営まれるこの営みの上に、今の畑や現在の杜仲茶づくりが成り立っています。
人の手で杜仲の種を発芽させるには少しコツが必要ですが、丁寧に扱えばほとんどの種を芽吹かせることができます。それでも、すべての苗が元気に育つわけではありません。成長が遅い苗、途中で力尽きてしまう苗もあります。だからこそ、生命が繋がるということは奇跡の連続なのだと、毎年あらためて感じさせられます。
来年もまた、この農園の風土に根ざした元気な杜仲を未来へ残していけるよう、私たちは苗づくりに取り組みます。小さな命のバトンを、次の季節へ、そしてその先の世代へとつないでいくために。
