なかでも扱いが難しいのが、ココナッツフラワー・サイリウムハスク・プロテインパウダーの3素材です。
これらは「使いたいから使う」のではなく、使わなければ成立しない素材です。ひとつはテクスチャの要として、ひとつは食物繊維・タンパク質といった栄養バランスを整える柱として、それぞれに確かな役割があります。グルテンフリー・シュガーフリーという制約のなかで、美味しさと身体への働きかけを両立させるために、この3つは欠かせない存在なのです。
ただし、だからこそ難しい。
ココナッツフラワーは吸水性が高く、しかも予測がきかない。サイリウムハスクは水を含むとハイドロゲルと呼ばれる強靭な網目構造を形成し、生地全体の弾力を支配します。プロテインパウダーは加熱によって熱変性を起こし、その性質ががらりと変わる。
この3つを少しでも配合し損ねると、生地は砂漠のように乾き切るか、ゴムのような弾力の塊になるか、どちらかです。低分子の糖質という「便利な緩衝材」を持たない分、それぞれの物理的挙動が直接テクスチャに現れてくる。数式の変数をひとつ変えただけで解が別物になるような、そんな繊細さがこの素材たちにはあります。