


妹は、何をやっても要領がいい。
理解も早く、飲み込みも早い。
草刈り機もそうだった。
使い始めたのは、たしか私の方が早かったはずなのに、
気がつけば、妹の方がはるかに上手になっていた。
動きに無駄がなく、リズムもいい。
見ていて気持ちいいほど、機械を自然に扱っている。
一方で、我が家の草刈り機は少し気難しい。
一度休憩を挟むと、途端に動きたがらなくなる。
エンジンが、なかなかかからない。
父はその機械の“癖”をよく知っていて、
少しのコツで、何事もなかったかのようにエンジンをかけてしまう。
けれど私がやると、そうはいかない。
スターターロープを引く。
何度も引く。
そのうち、関節が外れるのではないかと思うほど引く。
それでも、かからない。
見かねた妹が近づいてきて、
「ちょっと貸して」と言うでもなく、自然な手つきで機械に触れる。
ネジを少し緩め、スイッチを確かめ、
まるで機械の機嫌を読み取るように操作する。
すると――
あっさりと、エンジンがかかる。
その姿は、どこか父に似ていた。
少し悔しくて、でも少し誇らしい。
そんな気持ちを抱えながら、今日も我が家の草刈りは続いていく。

夕暮れ時、
ふと空を見上げると、
まだ明るさの残る青空でした。
その下で、
レモンが木になっています。
ひとつひとつが、
思った以上に、まあるい。
このレモンは
ブルーベリージャム用。
果汁として使います。
主役はあくまでブルーベリーですが、
レモンが入ると、
味がきゅっと締まるのです。
レモンといえば
すっぱい顔を思い浮かべがちですが、
このレモン、少し甘味が強いみたいで。
ジャムにするには、
少し甘味が強すぎるので、
品種を変えてみようか、
なんて話も、ぽつりと出ています。
レモンがなきゃ締まらない。
全部が前に出るわけではなく、
でも、いないと困る。
レモンには、
そういう役回りがよく似合いますよね。
夕方の光を受けて
レモンの皮が少しだけ輝いているのを見て、
「もう少ししたら、使いどきやな」
と、心の中でつぶやきました。
山の上にある
deai orchard(デアイオーチャード/出合オーチャード)では、
畑の木と、台所の作業が
こうして自然につながっています。
ブルーベリー畑のことを考えながら、
レモンの木を見る夕方でしたとさ。

畑のそばで、
父がくぬぎの木を切っていました。
なかなか立派に育った木なので、
「なんで切るん?」
と聞いてみると、
返ってきたのは、予想外の答えでした。
「大きくなりすぎると、
ともつゆで稲が育たんくなるから」
……ともつゆ?
初めて聞く言葉です。
雨は雨やろ、と思いながら
もう一度聞き返してみました。

朝の台所で、
父が静かに食パンと向き合っていました。
よくある朝ごはんの風景、
かと思いきや、
近くで見ていると、どうも様子が違います。
ブルーベリージャムは右側に一列。
バターは左側に一列。
どちらも控えめな量で、
なぜかとても几帳面。
全面に塗る気配は、まったくありません。
「そこだけ?」
と聞きたくなるのをこらえて見ていると、
父は何のためらいもなく
その食パンを、すっと半分に折りました。
折る。
切らない。
折る。
理由は特に語られません。

杉の元の溜池沿いで
ブルーベリーの木の剪定をしていました。
気がつくと、池のそばのウメモドキの木に
赤い実がなっています。
誰に見せるでもなく、
毎年ちゃんとこの場所で赤くなる実です。
剪定は、なかなか集中力のいる仕事で
気づけば体も、思っている以上に冷えてきます。
そんな頃合いで、ちょっとひと休み。

朝、deai orchard(デアイオーチャード/出合オーチャード)のブルーベリー畑に出てみると、
落ち葉の上に、うっすらと雪が積もっていました。
赤茶色に色づいたブルーベリーの葉っぱにも
ひらひら、ひらひら。
まるで様子をうかがうように、雪が舞い落ちてきます。
パリパリと音を立てていたはずの落ち葉は
雪をまとって、少しだけおとなしくなりました。
踏みしめるのが、なんだか申し訳ないような気がします。

いつもデアイオーチャードを応援いただき、心より感謝申し上げます。2025年も、皆さまのおかげで草花と共に日々を重ね、収穫やジャム作りに汗をかきながら、大切な季節の恵みを送り出すことができました。ブルーベリーやぶどう、季節の果実たちは、ご家庭の笑顔や贈り物として旅立っていき、本当に嬉しい一年でした。 
昨年は、自然と向き合う楽しさと厳しさを改めて感じた一年でもありました。鹿やイノシシ、畑近くで熊の目撃情報など、思ってもいない野生動物との距離が近づいてしまったりして、畑仕事にこれまでに無い緊張のある年末でしたが、畑や自然への思いがより増え、畑と暮らす喜びを深く感じました。 
2026年も、私たちはこの畑を守り、美味しいモノをつくって皆さんのもとへ届けていきます。自然の営みを大切に、手間ひまかけた果実やジャムで、食卓に小さな幸せをお届けできれば嬉しいです。(今年は新しい商品もお出しできるかと!)
今年もどうぞよろしくお願いいたします!

冬の夜、藁を一本一本しごきながら静かに手を動かした。写真に写るのは、藁で編んだ小さな一輪挿し。素朴なガラス瓶を包むように藁を束ねると、どこか昔の暮らしの気配が立ち上がる。外は冷え込み、風の音だけが聞こえる時間帯に、こうして手仕事をするのは不思議と心が落ち着く。秋に刈り取った稲の名残が、冬になってもこうして暮らしの中で役に立つことがうれしい。
藁仕事は、お正月の準備そのものだと思う。しめ縄や飾りだけでなく、「新しい年を迎えるために手を整える」行為そのものが、年の瀬の大切な時間なのだろう。便利なものがあふれる今でも、季節の素材に触れ、時間をかけて作ることで、冬から春へ向かう流れを身体で感じられる。藁の匂い、指先の感触、夜の静けさ。そんな小さな積み重ねが、食べること、暮らすことの土台になっている気がする。今年も静かに、次の季節への準備を始めている。
世界中のサンタさん、今夜は曇り空ですが、がんばってね。

畑の入り口に、柿の木があります。
すこーし秋めいてきた今日この頃。
朝、畑に着いて、ふと足元を見ると。

シャインマスカットですね。
この季節のぶどうの代名詞とも言えるのが、やっぱりシャインマスカットですね。
みんな大好き、シャインマスカット。
皮ごと食べられるのも大きな魅力です。
