中村魚市について


はじめまして。中村魚市の岡崎です。
私たちは1977年に創業し、幡多公設地方卸売市場の中で、大卸としてセリを行っている会社です。
市場の運営に関わる立場である私たちは、公平性を守るために、仲買さんや飲食店さんより先に魚を買い付けることができません。
そのため、私たちが扱う商品には、取引に至らなかった魚や、未利用魚、大きすぎて一つの飲食店では扱いきれない魚などを活用しています。
ただ、それらは決して質が落ちる魚ではありません。 四万十の海で育った魚は、波にもまれて身がしっかりと締まり、とても美味しいものばかりです。
私たちは、この「まだ十分に活かされていない美味しさ」を、少しでも多くの方に届けたいと考えています。
しまんとの人と魚の魅力

四万十市だけではありませんが、近年、暮らしの変化とともに魚を食べる機会は少しずつ減ってきています。
そんな中で、私たちはあらためて、この地域の魚の価値を見つめ直したいと思いました。
四万十の魚は、黒潮の流れの中で育ち、しっかりと身が締まり、味わいが濃いのが特徴です。
自然の力を受けて育ったその美味しさは、決して特別なものではなく、この土地では日常の中にある当たり前の恵みです。
そして、この町の魅力は魚だけではありません。 四万十市は、人と人との距離が近く、顔が見える関係の中で暮らしが成り立っている、あたたかな地域です。
市場に並ぶ魚の向こう側には、それを獲る漁師の方がいて、扱う人がいて、届ける人がいます。
ひとつひとつの魚の背景には、人の手と想いが重なっています。
その中心にある公設市場は、ただ魚が集まる場所ではなく、人と人、海と暮らしをつなぐ大切な場所です。
日々の営みの中で自然と支え合いながら、この町ならではの価値が育まれてきました。
私たちは、その魚の美味しさと、人のあたたかさの両方を、これからもつないでいきたいと考えています。
四万十で当たり前にあるこの豊かさを、きちんと形にして、より多くの方に届けていきたいと思っています。
塩野さんについて

はじめまして、塩野です。
料理人として長く現場に立ち、現在はその経験を活かして中村魚市さんの商品開発に関わっています。
もともとはアメリカ・ロサンゼルスで板前として働いていました。現地では、うま味調味料(MSG)を使わない食文化が根付いており、素材そのものの味をどれだけ引き出せるかが強く求められます。味を「足す」のではなく、「引き出す」という考え方を徹底的に体に染み込ませた時期でした。
帰国後は、オリエンタルホテルやマンダリン、銀座の寿司店などで寿司を握り、さらに経験を重ねてきました。その後、代々木上原で自身の店を構え、日々お客様と向き合いながら技術を磨いてきました。
江戸前寿司の世界では、素材の良さをどう引き出すかが何よりも重要です。仕込みや温度管理、包丁の入れ方ひとつで味は大きく変わります。そうした一つひとつの工程を、職人として繰り返し見直し、突き詰めてきました。
その経験から、魚一匹ごとの状態を見極めること、時間や温度による変化を前提に最適な状態を設計することの重要性を学びました。料理はその場で完成するものではなく、仕込みの段階からすでに味づくりが始まっていると考えています。
私が四万十市に訪れたのは偶然のことでしたが、岡崎社長の四万十市を盛り上げたいという気持ちに共感し、私も一緒に良いものを作っていきたいと強く思いました。
四万十市には良いものがたくさんある、熱い想いを持つ人たちがいる、そんな方たちのために私の経験を活かしたいと思っています。
共同での商品開発について

正直に言うと、以前の私は「良い魚であれば売れる」と思っていました。 長年市場にいて、魚の質には自信がありましたし、しまんとの魚の良さは食べれば伝わるはずだと考えていたんです。
ですが、塩野さんと一緒に取り組むようになって、その考えは大きく変わりました。
塩野さんが大切にしているのは、「どうすればお客様の元で一番美味しく食べられるか」という視点です。
例えば血合いの部分についてですが、これはもともと私たちも取り除いていました。
四万十の魚は全体的に味がしっかりとしていて濃いため、血合いまで含めてしまうと、どうしても味が強くなりすぎてしまい、食べづらさにつながることがあります。
だからこそ、魚そのものの美味しさをバランスよく感じていただくために、あえて血合いは外すようにしてきました。
この考え方は、塩野さんが大切にしている「素材の良さを引き立てる」という方向性とも一致しており、私たちのやり方が間違っていなかったことを改めて確認することができました。
また、漬け丼についても同じです。
一般的には甘辛いタレで魚の臭みを抑えるような商品も多い中で、あくまで魚の味を引き立てるものにするという考え方は、私たちがもともと持っていた「魚の良さを活かしたい」という想いと重なるものでした。
方向性の正しさを確認できたことに加え、そこに塩野さんの技術や視点が加わることで、商品としての完成度はさらに高まったと感じています。
加工のタイミングや冷凍方法についても細かなアドバイスをいただき、瞬間冷凍や-60度での保管といった技術を取り入れることで、解凍後の食感や味わいも大きく向上しています。
自分たちだけでは気づけなかった部分に手を入れることで、「ここまで変わるのか」と実感しています。
四万十の魚は、本来とても質が高いものです。 ただ、高知市内からも距離がある立地のため、流通の面で制約があり、四万十市外にはなかなか出回らないのが現状です。
だからこそ、この味をもっと多くの方に知っていただきたいという想いがあります。 目の前にあるこの良い魚を、きちんと美味しい形にして届けることができれば、必ず価値として伝わるはずだと感じています。
まだ試行錯誤の途中ではありますが、塩野さんの技術や考え方を取り入れながら、これからも一つひとつ丁寧に、より美味しい商品づくりを続けていきたいと思っています。
私たちの目標

四万十には、まだ知られていない美味しいものがたくさんあります。私たちは、そのひとつひとつを丁寧に届けていきたいと考えています。
市場に立っていると、日々たくさんの魚と向き合います。
その中には、取引に至らない魚や、うまく流通に乗らない魚もありますが、味そのものが劣るわけではありません。
むしろ、四万十の海で育った魚は、身が締まり、力強い美味しさを持っています。
この美味しさを、そのまま終わらせてしまうのではなく、きちんと手をかけて、食べる方のもとへ届けたい。
そんな想いから、私たちの商品づくりは始まりました。
ただ魚を届けるのではなく、「美味しい状態で届くこと」にこだわる。
そのために、加工や冷凍、味付けの一つひとつを見直しながら、四万十の魚の良さを素直に感じていただける形を探しています。
また、この取り組みは、私たちだけで成り立っているものではありません。地域の方々と関わり合いながら、少しずつ形になっています。
現在は、近隣の就労継続支援B型事業所の皆さんにも加工の一部を担っていただいています。
同じ地域の中で役割を分け合いながら、ひとつの商品をつくっていく。そこには、人と人とのつながりがあり、あたたかさがあります。
こうして生まれたものを、地域の外へ届けていくこと。それが、四万十という土地の価値を伝えることにつながっていくと感じています。
大きなことはできないかもしれません。ですが、小さいからこそできる丁寧さで、一つひとつ積み重ねていきたい。
四万十の海の恵みと、そこで関わる人たちの想いをのせて。これからも、この場所ならではの美味しさを、まっすぐに届けていきます。

