こんにちは。滋味農園の前田です。
東京でサラリーマンとして働きながら、隔週で三重県・伊賀に通い、無農薬・無肥料でブルーベリーを育てています。 一見すると「なんでまたそんなことを?」と聞かれそうな生活ですが、実のところ、自分にとってはとても自然な流れでたどり着いた選択でもあり、いまでは“自然と人間の関係”について深く考えるきっかけにもなっています。
東京での仕事は、いわゆる“経済を回す”とか“世の中を便利にする”といったテーマに日々向き合うもので、それはもちろん社会的に意味のあることだと思っていましたし、実際、やりがいもあります。
けれど、そんな生活のなかでふと気づいたのが、「自分はどうも、それらに強い関心を持っているわけではないかもしれない」という感覚でした。
もう少し正直に言えば、豊かさや便利さを追い求めているうちに、気づかぬうちに「何のために働いているのか」が見えなくなっていたんだと思います。 そこから改めて、自分の周りで起きていることを俯瞰してみたとき、あらゆるものが「人間のために」という前提で設計されていることに気づきました。 もちろん、わたしたちは人間ですから、それが前提になっているのは当たり前といえば当たり前なんですが、どこかそれが“偏っている”ように思えてならなかったんです。
そんな折に出会ったのが、「自然栽培」という農業における考え方でした。 農薬も肥料も使わず、植物や土が本来持っている力を信じて引き出す、いわば“任せる農法”です。
農薬については、残留農薬のリスクや散布による健康被害といった話題も多く、すでに問題意識を持っている方も多いと思います。 でも、個人的に衝撃だったのは、「肥料」についての考え方でした。
化学肥料は環境負荷がある、でも有機肥料ならいい──そう思い込んでいた節が自分にもありました。 けれど、よくよく考えてみると、そもそも自然の中には、人の手がなくても植物が育ち、実がなり、動物が果実を食べて命をつないでいくという、きわめて豊かな循環が存在しています。 なのに、それを「もっと甘く、もっと見栄えよく、もっとたくさん採れるように」と、人間の都合で手を加えることが“当たり前”になっている状況に、少しずつ疑問を抱くようになっていきました。
“モノが足りている時代”だからこそ、考えたいこと もちろん、肥料によって食料の安定供給が実現されていることには、心から感謝していますし、それがあってこその現代の暮らしだとも思っています。 ただ、今は“飢えをしのぐ”というより、“ありすぎて選ぶ”時代でもある。 だからこそ、少し立ち止まって、「これは地球にとってどうなんだろう?」「次の世代にとって健やかな営みなんだろうか?」と問い直すタイミングなのではないか──そんなふうに感じるようになったんです。
「人間が育てている」じゃなく、「分けてもらっている」 そんなときに、今の農園パートナーから「ブルーベリー農園を一緒にやらないか」という声がかかり、気づけば伊賀の地で、滋味農園という新しい営みが始まりました。
滋味農園の紹介文には、「野生で育ったブルーベリーを、私たち人間にも分けてもらっている感覚」と書いています。 それは決してキレイごとではなくて、実際に自然栽培で向き合っていると、「育てている」というより「育ってくれている」と思わされる瞬間が何度もあるんです。 肥料や農薬で“育てる力”を操作するのではなく、自然のリズムに寄り添いながら、その実りを“ありがたく分けてもらう”ような気持ちで関わっていきたいと、心から思っています。
正直、自分はまだ駆け出しの農家で、自然や環境のこともすべてを理解できているわけではありません。 うまく言葉にできないこともたくさんあるし、これからたくさん試行錯誤するかと思います。 でもだからこそ、思考を止めず、問いを持ち続けながら、この農園と向き合っていきたいと考えています。
滋味農園は、「安心・安全なブルーベリーを届ける」という役割だけでなく、 「地球にとっても健康的な営みとはなにか」を、暮らしの中で考えるきっかけになればという想いを込めて、日々運営しています。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。 もし、どこか共感するところがあったら、ぜひ滋味農園のInstagramやサイトを覗いてみてください。(@jimifarm) どうぞよろしくお願いします!


